ヴァレンティノ(VALENTINO)がパリで発表した、2015年春夏コレクション。
旅の意味とは何だろう。ファッションデザイナーたちの間でも、これまで一つの大きなテーマとして扱われてきた旅。今季のヴァレンティノにとってもそれは間違いない。けれど今回インスパイアされたのは、現代人の旅ではなく、時は18世紀、ヨーロッパの上流社会の青年たちが教育の総仕上げとして行なったという国外旅行「グランドツアー」だ。この教養を身につけるための旅が、300年以上の時を経たランウェイで、あでやかなコレクションとして現れた。
ショーで現れたアイテムは、様々なモチーフに彩られている。バロック調の花や、繊細に描かれた海の風景、クラシックな建造物。時にはデコラティブなパターンとして、時にはアイコニックなモチーフとして、またある時は抽象的なイメージとして表現される、旅先のアイデア。それは、ドレスやスカート、コート、バッグとあらゆるアイテムのなかに生かされていて、コーディネートに統一感を生み出している。
そして、一口には言及できないほどに多様であるのは、モチーフだけでなくシルエットも同じだ。直線的でモダンなパンツルックから、ミニマルなラインのドレス、たっぷりとしたロマンティックなロングドレスまで。エプロンのようなドレスは、優雅なフリルがゆらめく、ユニークな仕上がりに。
さらには、大きく開かれた背中や胸元、今にも消え入りそうなオーガンザ、フラットサンダルに採用された細いストラップなど、センシュアルなデザインも見られた。それは、クラシカルなコレクションを、モダンにかえる一つのエッセンス。旅をまとう。そう言っても良いほどに、一見して土地の景色が浮かぶようなコレクションは、観る者をイタリアへの旅へと誘っていった。