ジル サンダー(JIL SANDER)の2025年春夏コレクションを紹介。
今季のジル サンダーは、カナダ人写真家であるグレッグ・ジラードが撮影したプリント写真にインスパイア。1972年から1982年にかけて撮られた、バンクーバーの港を彩るネオンや、そこに映し出される孤独な心象などに親和性を見つけ出し、衣服に落とし込んだ都会的なコレクションだ。
たとえば、玉虫色に輝くジャケットでは、あらゆる性質の物事を内包している“都市の多様性”を表現。肩幅を広くとり、身頃にかけて逆三角形の角ばったシルエットを採用することで、ウィメンズとメンズのいずれにもマッチする。またフォーマルなスタイリングだけでなく、ウエスト部分をベルトマークすれば、カジュアルダウンも叶うなど、対照的な要素を併せ持っているのが印象的だ。
パンクーバーから一転、香港の夜の街へ誘われると、テクノロジーが発展する前の時代にタイムスリップ。茶色を帯びたベルベットのカーテンや花柄のカーペット、レトロな照明、黒電話といった“まるで映画のワンシーン”のようなプリントを施している。ランウェイでは、ミントグリーンの車が走る様子をあしらったセットアップや砂浜のプリントシャツなど、街の情景が目を惹くルックも披露された。
素材使いは、実にバリエーション豊かだ。柔らかなシフォンの花をあしらったイブニングドレスをはじめ、クロシェ編みのフラワーモチーフを配したニットカーディガン、パリッとした質感のレザースカート、丸襟のレース刺繍シャツ、光沢感のあるレインコートなど、多彩な要素を融合させていた。
洗練されたアクセサリーも見逃せない。全体を通して、冷たさを感じるシルバーのピアスが散見され、アイコンバッグ「カンノーロ」もメタル素材へと装いを変えている。
2024年秋冬コレクションに続き、ベーシックカラーを主軸としながらも、華やかなカラーパレットを採用。ブライトレッドからソフトピンク、コーラルオレンジのグラデーション、パステルミント、ペールブルーといった、グレッグ・ジラードの写真から切り取られた色彩が、今季のコレクションに息吹を与える。