企画展「辻 永 ふたつの顔を持つ画家─油彩と植物画─」が、茨城県近代美術館にて、2022年10月25日(火)から12月11日(日)まで開催される。

洋画家・辻永のふたつの顔

辻永(つじ ひさし)は、大正から昭和にかけて活躍した洋画家だ。初期に山羊をモチーフにした油彩画で評価を得た辻は、約一年間の滞欧を経て帰国後は日本各地の風景を描き、洋画壇で確固たる地位を確立。一方、少年の頃から草花を好み、生涯にわたって2万枚以上ともされる植物画を、発表目的ではなく純粋な楽しみや心の慰めとして描いた。

企画展「辻 永 ふたつの顔を持つ画家─油彩と植物画─」では、洋画界で活躍した「公」ともいうべき油彩作品と、自身の楽しみとして描いた「個」のための植物画という、辻のふたつの顔に着目。展覧会などへの出品作を中心とする油彩画約50点と、植物画約60点を通して、この画家の本質に迫る。

洋画壇を代表する画家として

1884年(明治17)広島に生まれ、水戸で育った辻は、東京美術学校西洋画科で黒田清輝や岡田三郎助に師事し、在学中から白馬会展に入選するなど頭角をあらわした。1908年(明治41)、家族とともに現在の恵比寿に移って山羊園を開くと、飼育している山羊をモチーフに作品を制作、「山羊の画家」として知られてゆくようになる。その作品は、当初はアカデミスムと印象派の作風を備えた外光派的な表現を示していたものの、やがて平面的な構図と彩色を特徴とする装飾的な作風へと移っていった。

1920年(大正9)から翌年にかけてヨーロッパに滞在した辻は、パリを拠点にベルギー、オランダ、スペイン、そしてイタリアなどを訪れ、風景画を制作。現地の街並みを落ち着いた色調と簡略化した筆致で描くなど、それまでの作風とは異なる表現を試みた。帰国後は国内の風景画を数多く手がけ、1940年代以降は大胆な筆致と鮮やかな色彩による独自の作風を確立することとなる。本展では、《無花果畑》や《夾竹桃と山羊》、《ブルーヂュの秋》、《須磨の朝》など、山羊を描いた初期作品から後年の風景画に至る油彩画を紹介する。

植物への愛情を感じられる植物画

一方、辻は植物学者を目指したことがあったほど少年の頃から草花を愛好しており、生涯にわたって2万枚以上の植物画を描いた。緻密な描写で草花の特徴を捉えたこれらの作品は、公に発表するためではなく、個人的な楽しみや心の慰めとして描かれたものであった。会場では、《てんぢくあふひ》や《ぎんばあかしあ》、《とけいそう》など、植物に対する深い愛情と探究心から生まれた植物画も見ることができる。

展覧会概要

企画展「辻 永 ふたつの顔を持つ画家─油彩と植物画─」
会期：2022年10月25日(火)〜12月11日(日)
会場：茨城県近代美術館
住所：茨城県水戸市千波町東久保666-1
開館時間：9:30〜17:00(最終入場時間 16:30)
休館日：月曜日
観覧料：一般 730円(610円)、満70歳以上 360円(300円)、高大生 490円(370円)、小中生 240円(180円)
※( )内は20名以上の団体料金
※土曜日は高校生以下無料
※障害者手帳、指定難病特定医療費受給者証などの持参者は無料
※11月13日(日)茨城県民の日は誰でも入場無料
※ウェブ予約を推奨(美術館ホームページでの「日時指定ウェブ整理券」(無料)取得者が優先入場、来館日の1か月前より予約可能)

【問い合わせ先】
茨城県近代美術館
TEL：029-243-5111