エズミ(EZUMi) 2023年春夏コレクションが、2022年8月29日(月)東京・KITTE内の博物館「インターメディアテク」にて発表された。
約3年ぶりのショー開催となる今シーズンは、デザイナー・江角泰俊の原点回帰ともいえるコレクションとなった。インスピレーション源になったのは、江角がセントラル・セント・マーチンズの留学時代に作成した一冊のスケッチブック。“Victorian woman in modern day"とタイトルを付けたその中身は、“ファッションの栄華を極めたヴィクトリア時代の女性が、もし現代にいたら…”という、極めてシンプルなアイディアのもと制作されたコレクションであった。
今季改めてそのスケッチブックを開いた江角は、改めてヴィクトリアン朝時代の服飾文化を中心に調べることからスタート。当時の特徴的なディテールや装飾の構造を研究してみたり、分解し現代のテイストに合うように再構築してみたり…。昨今<建築>を着想源にしたコレクションを発表してきたブランドのテイストとは一変し、装飾を駆使しながらも力強いフェミニティを感じさせる新しいコレクションが幕を開けた。
コレクションのシグネチャーとなるのは、ヴィクトリアン朝時代を象徴するコルセットだ。女性の体躯をキュッと絞る象徴的なフォルムはそのままに、裾にはひらりとひらめくフリルをあしらって。それでいて甘くなりすぎないように、洗練されたテーラードで再解釈しているのも今季の大きな特徴といえるだろう。
ウエストを絞るコルセットの機能を踏襲したように、たっぷりのギャザーをボディに配したブラウスも登場した。艶やかな光沢を放つ淡いブルーの布地を採用した上品な表情ながら、レースで切り替えたタイトなアシンメトリースカートを合わせることで、さり気ないセンシュアリティを演出している。
身体のフォルムを拡張することが、“女性の美”として捉えられたヴィクトリアン朝時代にならい、今季のボトムスやドレスも、ヒップを強調するクリノリンやバッスル、パニエなどを使用した特徴的なスタイルが主流に。ボリューミーなシルエットながら、シックなブラックやホワイトなど、あえてシンプルな単色使いを採用することで、過剰になりすぎない絶妙なバランス感覚で提案している。
一方今シーズンのアウターは、極めてマニッシュなムードに仕上げているのも見逃せない。ベースとなったのは、テーラードジャケットの起源にもなったフロックコートや、男性のスーツを女性が取り入れたエドワーディアンジャケットなど。歴史衣装のヘリテージの中にあるエレガンスを、現代女性の衣服として昇華させたアウターの数々は、江角の原点である英国文化を強く感じさせるものでもある。
今回の原点回帰を通して、ブランドを今一度見直す機会ができたと語る江角。それは本コレクションだけに留まらず、今までのブランドのテイスト・スタイルに一度終止符を打つことを意味するのだという。
ランウェイのラストに登場したパフスリーブのジャケットのルックは、パワーショルダーを連想させる堂々とした姿であった。甘さだけでなく、力強さを秘めたその女性像は、きっと未来でも新しい魅力を解き放つ物語を予感させる。