マラミュート(malamute)の2022年秋冬コレクションが、2022年3月18日(金)に発表された。テーマは「out of action」。
行動制限のあった2年間を振り返る中で、洋服を着る“オケージョン”ではなく、瞬間的な“シーン”について考えを巡らせたというデザイナー小髙真理。彼女が思い出したのは、パリのポンピドゥー・センターで、田中敦子の電気服と出会ったときの一コマだ。明滅するドレスと対峙した時の偶然の光景が、今でもはっきりと目に浮かぶのだという。
時を経ても、ふたたび思い出すほどの出来事――このハプニングともいえるシーンを落とし込んだのが今季のコレクション。日常の中に突如として現れるシーン、その瞬間に生まれてくるハラハラ、ドキドキする高揚感を、“スタイリングの楽しさ”がある洋服で表現している。
象徴的なのは、ブランドが得意とするニットとジップのコンビネーションだ。バイカラー仕立ての花柄ジャガードスカートにはスライダー付きのスリットを、ハイゲージのカーディガンのフロントにはダブルジップを取り入れた。ファスナーを開閉するだけで自由自在にシルエットを変えることができるピースは、洋服を纏う人の瞬間的な感情の機微にまで寄り添ってくれる。ウエストにタックを入れたニットコートも、その時々の姿勢や着こなしによって印象ががらりと変わる、“遊び”のあるピースだ。
動的なエネルギーに満ち溢れているのも特徴。ここ数シーズン「安心できる空間、抑圧された感情」というコンセプトを貫いてきたマラミュートだが、今後シーズンのコレクションには、それとは対照をなすパワフルで解放的なムードが漂っている。
イヴ・クラインのアート作品から抽出したブルー&ピンクがコントラストを織りなすセーターは、リズミカルかつエネルギッシュな印象。60年代のモッズファッションを思わせるMA-1や、グランジ風のノルディックセーターには、若者たちの反骨精神が滲んでいる。ラメ糸を編んだプリーツスカートや、電気服にインスパイアされたイヤリングの煌めきも、コレクション全体に明るく、浮き立つようなエネルギーをもたらしていた。