アンリアレイジ(ANREALAGE)の2022‐23年秋冬コレクション「プラネット(PLANET)」が、JAXA相模原キャンパスにある「宇宙探査実験棟」で発表された。
二次元と三次元を越境するコレクションを発表した前シーズン。デザイナー・森永邦彦が今季のクリエイションに向けて着目したのは<宇宙>だ。地球と月 - 384,400km離れた2つの星を繋ぐ服を通じて、宇宙で人類が活躍する未来のファッションを探求する。
最初に登場するのは、月面に見立てたランウェイを“浮遊”しながら歩くモデルたち。身につけているのは、ユナイテッド ヌード(UNITED NUDE)とのコラボレーションスニーカーと、宇宙服のように膨らんだ洋服だ。
シューズでは、ニール・アームストロングが人類初の月面着陸を成し遂げる際に着用した宇宙靴の底面を再現。丸みを帯びた洋服は、アランセーターや襟付きシャツ、デニムジャケット、トレンチコートなど地球上のあらゆる日常服が揃う。正円のネックラインや円筒のシルエットは小型の宇宙船を彷彿させ、宇宙に行くことを夢見た幼少期の無邪気な気持ちを思い出させてくれる。
これらの洋服には、NASAが開発したマイナス196℃をも断熱する宇宙服用の新素材「エアロゲル」を使用。また、MA-1など一部のアイテムには、「空調服」に用いられている“ファン”を取り付け、機能性においても今季のコンセプトを反映させた。
真っ白なアイテムがコレクションを席巻する中で、一際目を引くのはオールブラックのドレスだ。これらのピースは、生地に織り込まれた繊細な光ファイバーによって、まるで液晶ディスプレイのように様々な柄や色を映し出すことが可能。ルックでは、チェック柄から千鳥格子、地球を思わせるドット柄、「THE EARTH WAS BLUE」の文字まで、多種多様なデザインを確認できる。
終盤には月から地球へと移動したモデルたちが登場。驚く程膨らんでいた彼女たちの洋服は、重力の影響を受けて萎んでいる。キルティングドレスの肩やジャンプスーツのウエストラインは元の位置へと落下し、美しいドレープやギャザーになる。
なお、デザイナーの森永は今回のコレクションを手掛けるに当たり、<誰もが月と地球を往来し、国や人種さえも超えた“地球人”という感覚が日常になる日>に思いを馳せたという。平和への祈りを込めながら、宇宙服と地球服を曖昧にした“未来の服”は、纏う者をポジティブな気持ちにしてくれるに違いない。