ジョン ローレンス サリバン(JOHN LAWRENCE SULLIVAN)の2022年秋冬メンズコレクションが発表された。
「DECADENTS」すなわち“頽廃”をテーマとした、今季のジョン ローレンス サリバン。その眼目は、単に病的で荒々しいさまであるというより、時とともに沈み、朽ちゆく、その重々しい移ろいのプロセス、その一瞬を執拗に衣服へと具現化させてゆくことにあるように思われる。
屈強なエレガンスが匂いたつテーラリングは、頽廃の言葉のもとに崩れゆく。いかにしてか。シングルブレストやダブルブレストのジャケット、チェスターコート、立体感のあるスリーブのダブルブレストコートなどクラシカルなウェアは、いわば前のめりのシルエットを描く。フロントを狭め、逆にバックの分量を増やし、またスリーブは長く設定することで、エレガントな仕立ては重厚で俯き加減の陰鬱なフォルムに作りかえられている。
ディテールにしても、こうした俯くフォルムに引きずり込まれる。オーバーサイズのレザーライダースジャケットや重厚なムードを漂わせるトレンチコートは、肩線の位置やショルダーのエポーレット、あるいはフラップをフロントにずらして配置。徐々に下方へと堕ちゆくような、不安なムードを漂わせる。
素材もまた、重厚でありつつ経年変化を──むしろ古びた趣と言ったほうが良いかもしれない──帯びたようである。オーバーサイズのチェスターコートやMA-1ジャケットなどに用いられている、糸飛びを施したジャカードは、潮田千春による空間に糸を張り巡らせた作品に着想を得ているという。また、ブルゾンの全面やコートのバックにはシャギーなシュタイフ(Steiff)のファーをあしらうなど、張り詰めた冷徹なテクスチャーからは一転し、荒々しくもその肌理を愛でるように豊かな素材感で仕上げられた。
頽廃の移ろいのもとにテーラードやミリタリーを崩しつつも、随所にワークテイストを取り入れている点も特徴だ。ファイヤーマンコートはその一例。そればかりでなく、このコートを特徴付けるバックルは、フロントにファスナーを配したロングニットやデニムパンツに用いるなど、ディテールの点でもコレクションのウェアに取り入れられている。