フミト ガンリュウ(FUMITO GANRYU)の2022年秋冬コレクションが発表された。
今季のフミト ガンリュウがテーマとした「ホメオスタシス(HOMEOSTASIS)」=恒常性とは、生物が内部の状態を一定に保つ性質のことである。人間ならば、外が暑い・寒いにかかわらず、体温がいわゆる平熱の値をとることがその一例に挙げられるだろう。恒常性をテーマとすること──それはいわば、何がしかの方向性を持たないニュートラルな平衡点を起点とすることだろう。
つまり、キーワードは「中性性」だ。それは、ある極に振り切れず、複数の極の平衡点、中庸に位置することだ。だから、ウェアのテイストや機能性はその見た目とは一致しない。たとえばMA-1は、一見すればオーバーなサイズ感に仕上げられたミリタリーテイストの光る1着だが、フロントポケットから腕を通して出すことができ、するとポンチョのようにエレガントな佇まいで着用することができる。
また、身体をふわりと覆うようなポンチョは、寝袋として使用することが可能。軽やかなダウンや柔らかなフェイクファー、あるいはボア素材でできた長方形の寝袋から、ファスナー使いによってリラクシングな衣服の形へと変化する。
そうした中性性の起点となるのは、やはり衣服を身にまとう身体という現実性だろう。現実性の対極にあるものに、たとえば仮想現実を思い浮かべることができるが、コレクションでは仮想現実の世界のヴィヴィッドな色彩に着想を得て、それを衣服へと転換。リブニットには、表層にブラックを、下層に鮮やかなシアンカラーを組み合わせることで、伸縮に伴って独特の表情で色彩を呈するように仕上げた。
また、バックプリーツを施したチェックシャツや、オーバーシルエットのダッフルコート、ナイロン素材ながらも上品なムードで仕上げたキルティングジャケットなど、鮮烈なトーンが特徴的なカラーをのせたアイテムも数多く展開した。