ラッド ミュージシャン(LAD MUSICIAN)は、2022年春夏コレクションを発表した。
2022年春夏シーズンのテーマは「POST ROMANTICISM」。モリス・バーマンの著書『デカルトからベイトソンへ ――世界の再魔術化』が着想源となっており、合理的な思考に覆われた日常からの解放を求め、ファンタジーやロマンを取り戻そうとする“ポスト・ロマンティシズム”をデザインに落とし込んだ。また、映画『聖なやる鹿殺し』や、インテリアデザイナー・倉俣史朗の照明器具、建築家・デザイナーのマルセル・ブロイヤーが用いたポストモダンな発色の“赤”からもインスピレーションを得ている。
セットアップやブルゾン、Tシャツなどにあしらわれた、鮮やかさを抑えたトーンのプリントが目を引く。“雨の中で朽ち果てた花”をイメージしたグラフィックは、陰影をまといながら服地に載せられることで、退廃性と神秘性を兼ね備えた表情に。
加えて、“別離”を暗示させる親子の豹を織柄で表現したニットや、バロック期の絵画や宇多田ヒカルの楽曲「桜流し」の歌詞からインスパイアされたグラフィックTシャツなど、どこか余韻を残していくようなグラフィックが散見された。艶やかなシャツには、ポスト・パンクバンド「The Cure」のロバート・スミスからアイディアを得て、19世紀絵画の猫モチーフをオン。闇の中からふわっと像が浮かび上がってくるかのような幻想的な質感を、プリントで表現している。
分量感を持たせつつも凛とした佇まいを形作るシルエットも特徴的だ。MA-1やコーデュロイブルゾン、アノラックパーカー、フーディーといったカジュアルなトップスは袖にボリュームを持たせることでシルエットの重心を下げ、丸みを帯びたフォルムに仕上げた。立体感のあるパターンメイキングによって、ボリュームがありながらもラフにならずソリッドさを保っている。
一方で、淡いミントグリーンのテーラードジャケットやライトベージュのロングジャケットなど、端正な仕立てのジャケットはエッジを効かせたショルダーに、ウエストをシェイプさせることでシルエットに緩急をプラスした。Aラインシルエットのトレンチコートは、ベルトでウエストマークすると、ゴシックさが際立つ佇まいに。
ベストのデザインをベースに仕立てたショートジャケットは、緩やかなボックスシルエットと、コンパクトな着丈やシャープな裾のカッティング、セットインのボリューム袖といったそれぞれのパーツが織りなす絶妙なバランス感によって、エレガントな仕上がりとなっている。
また、ギャザーを駆使してドレープを効かせたワイドパンツは、光沢感のある生地を用いることでふわりとした独特の浮遊感を際立たせた。タックをとったフレアパンツは身体と程よい距離感を保ちつつ、流れるようなシルエットを描いている。さらに、ダイナミックな分量感のジャージーワイドパンツやバルーンパンツ、テーパードパンツ、スキニーパンツと、多彩なシルエットのボトムスが登場している。