エルメス(HERMÈS)の2022年春夏コレクションが、フランス・パリで発表された。
パリ市内から少し離れたル・ブルージェ空港に設けられた会場は、黄色と赤褐色のグラデーションで彩られ、壮大な自然の景色を彷彿とさせた。大地と太陽を彷彿とさせるエネルギッシュなカラーパレットに満たされた今季は、地平線と水平線=Horizonsがキーワード。どこまでも続く地平線・水平線に向かって快活に歩む、自由を取り戻した女性へのオマージュを捧げた。
レザーは、第二の皮膚のようになめらかで、無重力のような軽やかさ。夏のリゾートに欠かせないホルターネックのワンピースやオールインワン、スポーティーなクロップド丈のトップス、艶めくスタンドカラーのスポーティーなジャケットは、上質なレザーの魅力を如何なく発揮して自由な旅へと適応する。レザーのピースをピクセル状に並べたワンピースやスカートは、しなやかに身体へのラインへと寄り添い、より軽快なエレガンスを纏わせる。
エルメスの象徴的なキャンバス素材「トワルアッシュ」は、レザーとともに用いられることで、快活な女性たちの味方となった。軽量で耐久性にも優れるこの素材はきっと彼女たちにも適しているのだろう。
また、1970年代のスカーフを再解釈した水彩画タッチのプリントを施したシルク素材のシャツやスカートは、そのモチーフが“剣”だからか、フェミニンかつ繊細である一方、エルメスが描く女性像のタフさ、芯の強さも内包されているようだ。他方、上質なシルクならではの軽やかさは、風を味方とし、颯爽と歩く女性たちを後押しする。
パイピングやスタッズは、ほんの少しの力強さと繊細さを兼ね備えた重要なディテールだ。特に、多用されている丸みを帯びたスタッズは、バッグの四隅に手打ちしたビズを着想とする小さなもの。控えめなパールのようなさりげない存在感で、コートの前合わせやアウトポケットの縁取り部分へと配されている。
また、ドローコードはキュッと絞ることで体のラインを強調すると同時に、生み出すギャザーによって空気をはらむテクスチャーと女性らしい有機的なラインを演出する。随所にあしらわれたアイレットモチーフは、エルメスの真髄とも言える乗馬の要素を内包した。
© Filippo Fior