エルメネジルド ゼニア(Ermenegildo Zegna)の2022年春夏コレクションがイタリア・ミラノで発表された。
誰もが気軽に身に着けられ、柔軟に適応できる服。あまりにも軽やかに仕立てられた、今季のワードローブの数々は、エルメネジルド ゼニアの根幹にあるテーラリングの美しさの軸をぶらすことなく、それを感じさせた。フォーマルからストリートまで従来のジャンルを横断する、都会でも自然の中でも着られるようなラグジュアリーかつ新感覚のテーラードスタイルを提案している。
テキスタイルへのこだわりは、やはりエルメネジルド ゼニアならでは。植物性の繊維やジャージー素材など革新的な生地を織り交ぜつつ、軽やかさに特化したファブリックを選んだ。
紙のように薄いレザーは、パステルカラーと相まって全く重さがなく、ボクシーなブレザーは、まるで羽のように軽やかなナイロンによって、しなやかさを帯びる。ウォッシュ加工を施したシルクや後染めのウールなどは、きっと着込めば着込むほどに風合いが豊かになっていくのだろうと、一目見てそう思わせる。パッチワークやイタリア製ウール「ビエルモンテ」によって表現される幾何学的なパターンは、洗練された軽快なムードを崩さずにコレクションを引き締めた。
シルエットは、着る人の動きを味方にする流れるようなラインで構成され、そこに変化を加えるドローコードのディテールも目に留まる。特に、度々登場した着物を彷彿とさせるノーカラーのアウターとワイドストレートパンツのセットアップスタイルはその好例。エフォートレスなジャケットのデザインは、紐の存在によって身に着ける人に委ねる形となり、時には垂らしたまま、またある時はウエストを絞ることで表情を変える。
最後に“実用性”も今季のキーワードと言えるだろう。機能的なワークウェアを彷彿とさせるオールインワンは、エルメネジルド ゼニアのフィルターを通して洗練された新たな正装のようだ。また、ジャケット、コート、パンツの至る所に配された大きなポケットは、手ぶらで出かけられる究極の実用性を叶えると同時に、個性を主張する要因にもなっている。