展覧会「上野リチ:ウィーンからきたデザイン・ファンタジー」が、京都国立近代美術館にて、2021年11月16日(火)から2022年1月16日(日)まで開催される。その後、2022年2月18日(金)から5月15日(日)まで、東京・丸の内の三菱一号館美術館に巡回する。
上野リチ・リックスは、ウィーンと京都で活躍したデザイナーだ。1893年、ウィーンに生まれ、多彩なデザイン分野で精力的な制作活動を展開したリチは、日本人建築家・上野伊三郎との結婚を機に京都に移住。戦前にはウィーンと京都を行き来して日用品や室内装飾などのデザインを手がけ、戦後は後進の育成にも尽力した。
展覧会「上野リチ:ウィーンからきたデザイン・ファンタジー」は、上野リチ・リックスの仕事を網羅的に紹介する、世界初の大規模な回顧展。国内最大規模の作品群を所蔵する京都国立近代美術館をはじめ、国内外からリチと関連作家の作品を集め、色彩豊かな“リチのデザイン世界”の全貌に迫る。
1913年にウィーン工芸学校に入学したリチは、テキスタイル、七宝、彫刻を学ぶとともに、ウィーン分離派のメンバーである建築家ヨーゼフ・ホフマンに師事。1917年に同校を卒業すると、ホフマンの誘いに応じてウィーン工房に入り、テキスタイルとファッションを中心として多彩な制作活動を展開した。デザイン面でも、柔らかく自在な描線と多彩な色調により花や鳥などのモティーフを表現した、独自の作風が花開いてゆく。
第1章では、リチのウィーン時代に着目。ウィーン工芸学校の様相と、初期ウィーン工房が生みだしたデザインの新たな潮流を振り返るとともに、《プリント地デザイン[木立]》や《テキスタイル・デザイン:夏の風》といったリチの作品などから、当時のウィーン最先端のデザインを紹介する。
リチは1924年、ホフマンの建築設計事務所に在籍する日本人建築家・上野伊三郎と出会う。翌年に2人は結婚し、1926年には伊三郎の郷里である京都に移住。2人で協働し、「スターバー」をはじめとして商業店舗や個人住宅の設計・内装のデザインを手がけた。これと並行してリチは定期的にウィーンを訪れ、ますます多彩な作品を展開することになる。
第2章では、日本とウィーン、そしてリチの繋がりが見て取れる作品を概観したのち、結婚後のウィーン工房でのリチの充実した仕事を展示。さらに、来日後の活動を、伊三郎との協働という視点から紹介する。インターナショナル建築会を創設し、ブルーノ・タウトを日本に招聘したことで知られる伊三郎は、1936年、タウトの要請で群馬県工芸所所長に就任。リチも嘱託職員としてデザイン制作に携わった。本展では、群馬で結実したモダンデザインの成果も目にすることができる。
1930年にウィーン工房を退職したリチは、1935年に京都市染織試験場の技術嘱託として採用され図案部に配属される。翌年からは群馬県工芸所の仕事と兼業しつつ、1944年まで、主に外地へと輸出されるプリント布地や刺繍製品などのデザインを手がけた。終戦後は、新しい時代に適合するデザインを模索する京都の繊維会社や七宝製作所と協働する一方で、後進の育成にも注力し、サントリーの広告を手がけた柳原良平など数多くのデザイナーを輩出した。
第3章では、戦後のリチの活動にフォーカス。なかでも、東京日比谷にある日生劇場の旧レストラン「アクトレス」の壁画はリチ晩年の代表作であり、アルミ箔に覆われた壁と天井に、軽やかかつ色鮮やかに鳥が飛び交い花が咲き乱れる空間が展開されている。本章では、「アクトレス」壁画の一部再構成のほか、多数の作品と資料を展示する。
展覧会「上野リチ:ウィーンからきたデザイン・ファンタジー」
会期:2021年11月16日(火)〜2022年1月16日(日)
会場:京都国立近代美術館
住所:京都府京都市左京区岡崎円勝寺町26-1
休館日:月曜日(1月10日(月・祝)は開館)、12月28日(火)〜1月3日(月)
開館時間:9:30〜17:00(金・土曜日は20:00まで)
※入館は閉館30分前まで
観覧料:一般 1,700円(1,500円)、大学生 1,100円(900円)、高校生 600円(400円)
※( )内は前売券および20名以上の団体券の料金
※中学生以下、母子家庭・父子家庭の世帯員、心身障がい者と付添者1名は無料(入館時に証明できるものを提示)
※前売券は、9月16日(木)から11月15日(月)まで販売
※チケットは、ローソンチケット(Lコード 55233)、チケットぴあ(Pコード 685-765)、セブンチケット(セブンコード 091-473)、イープラスほか主要プレイガイド、コンビニエンスストア、近鉄主要駅、京都国立近代美術館窓口(当日券のみ)などにて販売
※本料金で京都国立近代美術館コレクション展も観覧可
※開館時間は変更となる場合あり(来館前に最新情報を確認のこと)
■巡回情報
・三菱一号館美術館
会期:2022年2月18日(金)〜5月15日(日)
住所:東京都千代田区丸の内2-6-2
【問い合わせ先】
京都国立近代美術館
TEL:075-761-4111 (代表)