ケイスケヨシダ(KEISUKEYOSHIDA)の2021年秋冬コレクションが、2021年3月15日(月)に発表された。シーズンテーマは「Like a dead pigeon」。
今シーズン、デザイナーの吉田圭佑が向き合ったのは“若さ”というモチーフ。ここ数シーズン遠ざかってはいたが、吉田がデビュー時より追求してきたテーマでもある。改めてクリエーションの原点に立ち返り、少し大人になった自分の視点から今の若者を見つめてみると、“さえない青春時代”を送っていた自分と、先の見えない現代を生きる若者たちの姿が重なった。
コレクションのベースにあるのは、ダッフルコートやベージュのカーディガン、グレーのパーカー、プリーツスカートなど、学生を彷彿とさせるアイテム。引き裂かれたようなチェック柄スカートや、首もとが歪んだようなカットソーが、現代社会を彷彿とさせる不穏なムードをもたらしている。
シルエットは、人が目を伏せ、うつむいている状態をイメージしたもの。「“装い”でなく“佇まい”から洋服づくりをスタートする」という吉田ならではのクリエーションだ。かっちりとしたテーラードのロングコートは背中にカッティングを施し、そこに身体を通すことによって、前かがみの姿勢を表現。ミリタリージャケットは丈の異なる2枚の生地をレイヤードすることによって、うなだれている人の姿勢を再現している。
シーズンテーマにも掲げた「dead pigeon」は、グラフィックとしてコレクションに登場。パーカーやコートのフロントに大胆にあしらわれている。このモチーフは、ある日、吉田が見かけた鳩の死骸からインスピレーションを得たもの。死骸は翌日になると何ものかに攫われ、羽だけがふわりと残っていた。その情景の虚しさ、そして愛しさが、今季のテーマである青春とリンクしたという。
歪んだ制服、うつむいた姿勢、亡骸...若者の“さえない姿”を落とし込んだという今季のクリエーションは、額面通りに受け取れば、ネガティブなものだ。会場に並べられた紫色の学校机や、ショーミュージックに起用された雨音も、観客を暗い気分に陥れる。
しかし吉田は、今季のムードは「これからの未来が明るくなっていくことを予感させる“希望のメタファー”」だと言い切る。かつての吉田がファッションに出会い“さえない自分”を克服したように、教室でうつむいている少女たちにも明るい未来が必ず訪れる。そんなポジティブな願いを込めているのだと。