ユキ トリヰ(YUKI TORII)は、“世界でただ一人”休まずコレクション発表を続ける日本人デザイナー・鳥居ユキが手掛けるウィメンズブランドだ。その歴史は長く、1970年代にパリコレに進出した、日本を代表するブランドとしても知られている。
そんなユキ トリヰ 2021-22年秋冬コレクションは、およそ過去30年に及ぶブランドのアーカイブと共に発表される特別なものとなった。ランウェイに着座する‟ジャーナリスト風”マネキンたち22体が纏うのは、1979年~2008年にパリで発表された貴重なピースたち。ブランドの軌跡を感じさせながら、スポーティーな要素を加えた最新コレクションに引けをとらない、タイムレスな美しさを解き放っている。
こうして一堂に会したアーカイブを俯瞰してみると、ブランドらしいフェミニンかつ上品なムードをベースにしながら、実に様々なスタイルが交差しているのも印象的だ。ブランド立ち上げから、今なお現役で活躍し続けるデザイナー鳥居ユキは、一体どのような洋服作りを行ってきたのか?現代へと繋ぐ、ユキ トリヰのデザインを各年代ごとにプレイバックしてみよう。
1975年にパリコレクションで、デビューを果たしたユキ トリヰ。鮮やかなブルーのパイピングと、‟ころん”としたボタンが目を惹くニットジャケットには、現代のブランドにも通ずる植物のモチーフが手刺繍で施されている。ショルダーラインは、自立した女性像を連想させる、ややかっちりとしたシルエットで登場。
1980年代に入ると、ブランドアイデンティティである華やかなフラワーモチーフが様々なアプローチで表現される。中でも印象的だったのは、ジャカードの上に花刺繍を施した、高いクラフトマンシップを感じさせるプルオーバー。ジャカードに描かれたシックな花模様と、カラフルな花刺繍が、美しいコントラストを描き出している。
空気を孕んだように、ふんわりと膨らむパフスリーブの水玉柄ジャケットには、真っ赤なローズプリントを胸元に添えて。クラシカルな水玉模様に対して、意外性のあるドラマティックな薔薇は、当時街行く人の視線を釘付けにしたに違いない。
1990年代のコレクションを象徴するのは、見ているだけでも楽しくなる、多彩なチェック柄。タートルネックと合わせたノーカラーの黒ニットジャケットには、カラフルなラインを交差させることで、リズミカルなムードをプラス。
一方、端正なジャケットのセットアップには、明るいピンクレッドを主役にした、タータンチェック柄をのせた。スカートの裾にはフリンジをあしらうことで、秋冬らしい個性をプラスしているのもポイントだ。
時代の変化と共に、最新テクノロジーの目覚ましい発展を遂げた2000年代。それでもユキ トリヰが提案するのは、手作業を惜しまない丁寧な洋服作りだ。