江戸時代から明治時代にかけての浮世絵を一挙に展示する「浮世絵 FloatingWorld - 珠玉の斉藤コレクション」展が、2013年6月22日(土)より、東京・丸の内の三菱一号館美術館で開催される。会期中に2回の展示替えが行われ、1会期につき150点以上、計500点余の浮世絵が展示される。
「はかない世の中であるならば、せめて浮かれて暮らしたい」という江戸の人々の気分を反映した浮世絵。 現実とも享楽の世界とも思える“Floating World”を鮮やかに描いた浮世絵は、当時最先端の風俗や事象をするどく捉えていた。その独特の世界観は江戸の人々に留まらず、19世紀には欧米の人々をも魅了した。
本展では江戸から明治まで、浮世絵の誕生から爛熟に至る全貌を、全3期に分け展示する。川崎・砂子の里資料館長である斎藤文夫の膨大な浮世絵コレクションの中から選りすぐりの名品を展示するとともに、浮世絵の影響を受けたロートレックなど、ヨーロッパの近代版画を対比させる事で、浮世絵の普遍的な魅力に迫る。
■第1期 6月22日(土)〜7月15日(月・祝)
浮世絵の黄金期ー江戸のグラビア
浮世絵が庶民の楽しみとして生まれた17世紀後半、その関心の視線は当世の風俗、とくに遊里や芝居町といった享楽の場所に注がれていた。菱川師宣は版本や肉筆で江戸風俗を描き、浮世絵の地位を確固たるものとする。はじめは墨1色であった浮世絵は、明和期(1764-72)に多色摺の錦絵に発展。勝川春章、鳥居派、喜多川歌麿らの絵師が、美人画や役者絵の数々を生み出す。そして浮世絵は木版の大量複製によって安価で手に取りやすいメディアとなり、人々はそこに描かれた風俗を、雑誌のグラビアを眺めるようにして楽しんだ。
■第2期 7月17日(水)〜8月11日(日)
北斎・広重の登場ーツーリズムの発展
浮世絵においてただの背景でしかなかった風景表現は、葛飾北斎の「冨嶽三十六景」や歌川広重「東海道五拾参次之内」といったシリーズの作品によって、浮世絵の主要ジャンルとしての地位を確立した。19世紀初頭には十返舎一九の滑稽本「東海道中膝栗毛」がヒットするなど、人々の旅や行楽に対する関心が高まる。また透視図法による遠近描写や、ぼかしを使った技法が進歩するなど、浮世絵における技術革新が生まれたことで、四季折々の風情をともなった名所と風俗が描き出されることになる。
左)葛飾北斎 《冨嶽三十六景 凱風快晴》 文政末(1830) 大判 錦絵 川崎・砂子の里資料館蔵
右)初代歌川広重 《東海道五拾三次之内 日本橋 朝之景》 天保 4(1833)年 大判 錦絵 川崎・砂子の里資料館蔵
■第3期 8月13日(火)〜9月8日(日)
うつりゆく江戸から東京ージャーナリスティック、ノスタルジックな視線
浮世絵はどの時代においても、最先端の風俗を好奇心の赴くままに彩って描かれてきた。ところが幕末から明治にかけての激動の時代に、浮世絵は時代を写す鏡としてジャーナリスティックな側面を帯びることになる。海外からの脅威を受けて幕藩体制が崩壊し、新しい国家の成立していくこの時代、横浜絵における文明開化の風物、ガス灯、洋風建築、鉄道、洋装の美人など新しい風俗が取材された。
左)小林清親 《海運橋 第一銀行雪中》 明治 9(1876)年頃 大判 錦絵 川崎・砂子の里資料館蔵
右)歌川国芳 《東都三ッ股の図》 天保 3(1832)年頃 大判 錦絵 川崎・砂子の里資料館蔵
明治9年(1876)から小林清親が東京の名所を描いたシリーズは、夕陽や街灯など時間や状況に応じた光の変化を微妙な陰影によって描き出し、「光線画」と呼ばれた。これらの作品は近代化する東京の姿の裏に潜む、江戸へのノスタルジーを内包しているといえる。「浮世絵にスカイツリーが描かれていた?」と話題の作品、歌川国芳「東都三つ股の図」もこの時代に描かれている。
「これぞ浮世絵」と呼ぶに相応しい''浮世''の世界、お見逃し無く。
【展覧会詳細】
浮世絵 Floating World-珠玉の斎藤コレクション
会期:2013年6月22日(土)〜9月8日(日)
開催場所:三菱一号館美術館
住所:東京都千代田区丸の内2-6-2
開館時間:
木・金・土10:00~20:00
火・水・日・祝10:00~18:00
TEL:03-5777-8600(ハローダイヤル)
観覧料:大人¥1,300(1,100)、高校・大学生、¥1000、小・中学生¥500
※括弧内は前売り料金、入館済みのチケットを提示すると当日券が¥200引き