また映像や写真などによりコンテンポラリーに描かれた近代の作品から、源氏物語の絵巻の模写まで幅広く国や文化を超えて、その形や時代は様々だ。ニューヨークの写真家、ナン・ゴールディンの『性的依存のバラッド』シリーズや寺岡政美の浮世絵ポップアート『1000個のコンドームの物語浮世絵/メイツ』、荒木経惟などを展示するセックスをテーマにした展示の中には、18歳以下閲覧禁止の江戸の若衆文化や、葛飾北斎や喜多川歌麿の春画のコーナーも。
ゴウハル・ダシュティ
またイラン・イラク戦争が始まった年に生まれたゴウハル・ダシュティの『今日の生活と戦争』は、戦車の前や有刺鉄線の中で当たり前のように食事や家事をする架空のカップルを写し、紛争のある国のリアリティを表現したものだ。
失恋がテーマ。フランスの女性アーティスト、ソフィ・カルの『どうか元気で』は、恋人から別れを告げられた手紙に書かれた「Take care of yourself.」というフレーズを題材にした作品。「どういう意味だと思う?」と107人の女性に問いかけ、その回答を写真や映像で表現し、失恋の痛みが癒される過程を描いている。
元カレの会田誠との別れを映像作品にしたTANYの『昔の男に捧げる』は、なんと本人を出演させ、逃げ惑う会田誠がひたすらボコボコに蹴られる様子を撮影したなんともシュールなアート。その横には岡本太郎の『傷ましき腕』が並ぶ。
家庭・家族は人が生まれて最初に愛を受ける場所でもあり、その人の起源でもあり、また密室空間であり支配、依存などの危険性もはらむ危ういコミュニティであるとも言える。
イギリスの芸術家、デビッド・ホックニーの『両親』には自分が大きな影響を受けたモノの中に父と母を配されている。メキシコ人女性の作家フリーダ・カーロの『私の祖父母、両親、そして私(家系図)』は、ニューヨークのMOMAから運ばれ、本邦初公開となる。当時異人種間の婚姻を禁ずる法令が施行された時代背景があり、ドイツ系ユダヤ人の父を持つ作者が自分のルーツをモチーフにし、出自を明らかにすることで社会にプロテストしたものだ。
ポップな色調と暗いムードが共存する作風の、ポップアーティスト、ジャン・シャオガン(中国)の『血縁』や、アルコール依存症の父のいる日常風景を赤裸々に写したリチャード・ビリンガムの写真、また『ラーメン家』、『選挙』、『ヤクザ』、『デモ行進』などあらゆるシチュエーションや役に、作者とその父母や兄とで演じて家族写真を撮る写真家の浅田政志など、どこかダークで影がある作品から、思わず鑑賞者から笑みがこぼれるようなユーモアあふれる作品まで、多様な家族とその愛の形が集められている。