特別展「あやしい絵展」が、大阪歴史博物館にて、2021年7月3日(土)から8月15日(日)まで開催される。
政治・経済・文化などの多岐にわたる領野で、西洋から知識や技術がもたらされた明治期。美術も例外ではなく、西洋美術の技法の本格的な導入・展開にともない、多彩な美術潮流や制作の実践が起こった。そうしたなかで、退廃的・妖艶・グロテスク・エロティックといった言葉で形容できる表現も生まれることとなったのだ。
特別展「あやしい絵展」では、幕末から昭和初期にかけて制作された絵画、版画、雑誌や書籍の挿絵などから、「美しさ」には括れない「あやしい」魅力を湛えた表現を紹介。作品の生まれた社会的・文化的背景のみならず、人びとの奥底で複雑に絡みあった欲望にまで目を向ける。
幕末において、人々の関心は奇怪、凄惨、エロティックな表現へと向かった。激動の時代にあって、人びとはそうした強烈な作品を目にすることで、生きる不安を解消するとともに生きるための力を得ていたのかもしれない。本展では、月岡芳年《『魁題百撰相』のうち 辻弥兵衛盛昌》など、幕末から明治期にかけて生み出された作品を紹介する。
明治期以降、西洋の影響はあらゆる分野に波及し、個性や自由といった思潮は人びとの価値観をも大きく変化させた。人間が心の奥底に持つ、恋愛の喜びや苦悩といった感情も、美しいものや醜いもののかたちをとって、露わに表出されるようになったのだ。
会場では、“愛と苦悩”・“異界”・“一途と狂気”などのキーワードのもと、「あやしい」作品の数々を展示。上村松園《花がたみ》や北野恒富《道行》、鏑木清方《妖魚》、そして藤島武二《婦人と朝顔》など、神秘的で不可思議、そして奇怪な魅力を放つ日本画・洋画の数々を楽しめる。
また、さまざまな作家を魅了した「あやしい」物語から展開した作品も。橘小夢の《安珍と清姫》は、恋しい男を追って日高川を渡るうちに蛇へと姿を変えた女が、最後には男を焼き殺した物語「安珍・清姫伝説」に取材した作品だ。また、泉鏡花の小説『高野聖』の挿絵なども展示する。
さらに、アルフォンス・ミュシャやオーブリー・ビアズリー、ダンテ・ガブリエル・ロセッティなど、日本の画家たちに大きな影響を与えた西洋美術の作品も紹介。藤島武二による与謝野晶子『みだれ髪』装幀にはアール・ヌーヴォーの影響が見られるように、日本と西洋の作品を比較しつつ楽しめる。
特別展「あやしい絵展」
■大阪会場
会期:2021年7月3日(土)〜8月15日(日)
[前期 7月3日(土)〜7月26日(月) / 後期 7月28日(水)〜8月15日(日)]
会場:大阪歴史博物館 6階 特別展示室
住所:大阪府大阪市中央区大手前4-1-32
TEL:06-6946-5728
開館時間:9:30〜17:00(会期中の金曜日は20:00まで)
※入館は閉館30分前まで
休館日:火曜日(8月10日(火)は開館)
観覧料:
・大人=当日券 1,500円、前売券 1,300円、団体券 1,350円
・高校生・大学生=当日券 1,100円、前売券 900円、団体券 990円
※団体は20名以上
※中学生以下、障害者手帳などの所持者(介護者1名を含む)は無料(要証明)
※内容は変更となる場合あり(最新情報は博物館ホームページなどを確認)
■東京会場〈終了〉
会期:2021年3月23日(火)〜4月24日(土)
※当初は5月16日(日)までの会期を予定していたものの、臨時休館に伴い変更
会場:東京国立近代美術館
住所:東京都千代田区北の丸公園3-1