2013年3月18日(月)、アライサラ(araisara)の2013-14年 秋冬コレクションが発表された。先シーズン、コレクション発表の場をパリへと移した、アライサラが「東洋の文化を東京から発信し、世界へ届けたい」という思いのもと、東京へ舞い戻ってきた。今季のテーマはパリのショーから引き続き、「進化創造」。古からの「伝統技術」と、人類の叡智を積み重ねた「進化」を融合させ、昇華させる取り組みだ。
東京フィルハーモニー交響楽団による、豪華な生演奏でショーは幕を開ける。曲は、スメタナ作曲のかの有名な『モルダウ』。二つの水源から発し、やがて大河となるモルダウ川は、「伝統技術」と「進化」を融合させた今回のテーマ、そして東京とパリという2つの地を踏んだブランドの姿と重なる。
「世紀をまたいで残る物は、強く美しい。知的で自分らしく、強い女性像を作り上げた」というデザイナーの荒井沙羅の言葉通り、黒を基調としたルックは、シャープなカッティングや構築的なシルエットが光り、ベルトやグローブなどの小物がよりパワフルなアクセントとなった。
そんな黒の中に浮かび上がるのは、目にも鮮やかなコスモスの花畑。この花柄では、インクジェットという機械化したものにしか表現できない曖昧な線と、手捺染という職人の手作業でしか作れない立体感を一つの生地に納め、伝統と進化の互いの良さを引き出すことに成功した。そして、今回こうして初めて機械技術を取り入れた事も、ブランドにとっての進化だと言える。また、終盤を飾る京友禅の職人が手書きで描いた花々は、まるで日本画のごとく繊細で美しい。
パリ後デザインに変化はあったかとの質問に、デザイナーは「ないです。」ときっぱり答えた。自分のデザインを貫きながらも、今まで遠ざけてきた機械という新しい技術を取り入れた荒井。デザイナー自身が一番に「伝統技術と進化の融合」というものを体現しているのかもしれない。