ヨウジヤマモト(Yohji Yamamoto) 2020年秋冬コレクションが、2020年2月29日(金)にフランス・パリ市内で発表された。
ヨウジヤマモトのコード=黒一色に包まれた今季。ロングレングスを主流とするコレクションは、とにかくその“黒の布地”という舞台で繰り広げられる、様々なアプローチを伺うことができる。
序盤に登場したテーラードのロングジャケットスタイルには、ビスチェのようなレースアップのディテールを1つのキーワードとして捉えた。ジャケットのサイドやフロント、そして差込んだドレスなど、あらゆるところに現れたそのディテールは、もとよりセンシュアルな機能を持つことはもちろん、生地を縛ることで生まれるドレープや、崩れることのない美しいシルエットも相まって、黒から生まれる女性の美しさを静かに讃えている。
続いて行われたのは、黒を通して“柄”を生み出すという手法。格子柄のストールを差し込んだスタイリングが登場したかと思えば、その“チェック柄”を2Dや3Dといった観点から生地の上で表現。ツイード風のどこかおぼげなチェックや、“くりぬく”というカッティングによって生まれた網目模様のチェック、そしてチェック=図形としてとられたかのような、四角形の集合からなる立体的なモチーフ…。
再び2Dに戻ると、今度は真っ白なスプレーで描いたようなストリートライクなチェックへと進化。さらにそのモチーフを拡大させたジャケットは、まるでクロス(十字架)が浮かび上がるような神聖な表情へと導いている。
終盤にかけては、黒の世界へレッドやブルー、パープルといった差し色を投じた。波打つドレスのフリルに色をのせて躍動感をプラスしたり、グラフィカルなモチーフをボディに描いてみたり。黒に浮かび上がるそれらの色は、日常がフェイクと思えるほど、鮮やかな色彩を放つ。
再び黒一色の世界へと戻ると、色が無くともそこには無限の美しさが広がっていることに気付かされる。エレガントなドレスルックには、黒のチュールを“纏う”だけで、妖艶なムードをプラスしている。
ショーのラストに現れたのは、今季のコレクションとは繋がりを全く持たない鮮やかなピース。ブルーのドレスに真っ赤なカーディガン、そして首元には不思議な装飾を巻き付けている。ヨウジ ヤマモトならではの構築的なシルエットはそのままにもかかわらず、何故か“違和感”を覚えてしまうルックだ。会場を後にした後、“あれが黒だったなら…”と想像してしまった観客は、おそらく一人だけではないはずだ。