ディオール(DIOR)のフォール 2020 メンズコレクションが、アメリカ・マイアミにて発表された。
1947年に「ニュールック」を作りだし、一時は勢いを失ったパリ・モードに息吹を注いだクリスチャン・ディオール。若くアクティブな精神から生まれたその独自のスタイルは国境を越え、アメリカをはじめ新たな世界への道を切り拓くものであった。
今季、アーティスティック ディレクターのキム・ジョーンズは、そうしたクリスチャン・ディオールのドラマとアイディアに着想を得て、アメリカとフランスのアイデンティティがぶつかりそして重なりあう、エネルギッシュなスタイルを披露した。
ジャケットやロングコートは端正なテーラリングで仕立てられ、オートクチュールメゾンらしい風格を演出している。他方で、インナーには華やかなフローラル モチーフのシャツやマルチカラーのニットを挿しこみ、軽やかなショートパンツには目を惹くパイソン プリントをあしらって、単に上品なだけではない活気あふれるスタイルに仕上げている。
また、トロピカルウールで仕上げたスポーツジャケットは、ハンドステッチであしらったボタンがウエストのラインを引き締め、ニュールックを象徴するエレガントな「バー」スーツを彷彿とさせる。光沢感ある細身のパンツとあいまり上品さが漂うものの、重厚なブーツを履き、パイソン柄のクラッチバッグを手にすることで、遊び心を加えている。
カラーはカーキやモスグリーンといったアースカラーを基調にしつつも、時折ヴィヴィッドなカラーを差しこみ、エレガントなシルエットにサイケデリックな雰囲気を添えた。ハイビスカスレッド、パシフィックブルー、あるいはパステルといったカラーには、マイアミビーチに並ぶアールデコ建築の目にも鮮やかな色彩を映している。
また、つねにアートと親密な関係を結んできたディオールは今季、アーティストでありデザイナーでもあるショーン・ステューシーとコラボレーション。“DIOR”ロゴをグラフィティのようなストリート感あるデザインとして再解釈し、リラックス感のあるジャケットやシャツ、あるいはバッグへと落とし込んだ。
さらに、パリのオートクチュールメゾンとしてははじめて、ナイキ(NIKE)のジョーダンブランドをパートナーに迎え、「エア ジョーダン 1」の限定モデルを制作。上品なウェアのなかにスポーティな要素を加え、2つの文化の交錯を強調している。