タカヒロミヤシタザソロイスト.(TAKAHIROMIYASHITATheSoloist.)は、2020年春夏メンズコレクションを2019年6月18日(火)に、フランス・パリのパリ第5大学にて発表した。
夕方の柔らかな日差しが差し込む会場内。牧歌的かつ壮大な音楽とともに、“duet.”と題したショーがスタートした。ただ新たなクリエーションをしようとするのではなく、純粋に洋服が好きだという、デザイナー・宮下貴裕自身の気持ちに寄り添う服を再認識した今シーズン。“自分が着たい服”というシンプルな思いで作られた服からは、ファッションの自由な楽しさが感じられる。
着想源となったのは、宮下に影響を与えた80から90年代のNYのポップアートカルチャーシーンとミュージックシーンを築いた人々。宮下自身が、根幹をなすもう1人の自分と “デュエット”しているかの様に、好きなスタイルをクリエーションに投影していく。
ディズニーのミッキーマウスと“デュエット”したピースは、コレクションの至るところに登場した。たとえば、背中にディズニーのミッキーマウスのシルエットをパッチワークしたジャケット。袖やフロントには、真っ黒に塗りつぶされたワッペンや、色の無い勲章を配してユーモアを効かせた。
また、海軍の制服を思わせる、金ボタンを配したジャケットは刺繍でミッキーマウスを表現。袖口には、シンボリックなミッキーマウスの手のモチーフがゴールドの刺繍であしらわれている。さらに、薄くアクティブな生地を採用した総柄プリントのプリーツスカートやジャケットや、ミッキーマウスの手をモチーフにしたシルバーアクセサリー、さりげなくモチーフを潜ませたプリントなどが登場する。
シャツやベスト、スリーブなどのパーツをレイヤードし身体にフィットさせた、ユニフォームを思わせる端正な仕上がりが印象的。ホワイトのジャンプスーツに組み合わせた半身のベストや、サイドを開け、被るようにして着るベスト、スカーフのようにして身に着けたシャツの襟部分は、それぞれ独立していながらも全体と連動し、呼応している。
テーラードジャケットや、グレンチェックのプリーツスカート、ショート丈のオールインワンといったアイテムもまた、制服らしさを強めている。
脱構築的ながらも均整の取れたウェアに、細やかなシルバーのアクセサリーを重ね着けしたり、ネイティブアメリカンを彷彿させる羽根モチーフのブレスレットを着用したりすることで、繊細な華やかさを加えていく。スタッズとカラフルなビジューを配したベルトは、ヴィンテージライクな優雅さで、モノトーンのコーディネートのアイキャッチなアクセントに。
また、甲冑のような凹凸のあるジャケットやレギンス、足に巻いたゲートルなど、無骨でミリタリーなディテールも特徴的だ。足元にはチャンキーソールのハイカットスニーカーやエナメル厚底シューズを合わせ、ウェアのタイトなシルエットとコントラストを描くように、ボリューム感を創出している。
目を引いたのは、手書きの筆致でパワフルにテキストをあしらったジャケットやパンツ。ホワイトやブラックのウェア、もしくはパーツとともにスタイリングすることで、プリントされた文字がより一層グラフィカルでノイジーな印象を帯びる。ジャケットの背面には、リュックのように背負うことのできるストラップを配置。服を解体し、再構築するにあたってプラスされたギミックが、タカヒロミヤシタザソロイスト. ならではの独自性を強めている。