2020年世界の映画祭を席巻したポン・ジュノが手掛ける映画『パラサイト 半地下の家族』。日本では2020年1月に公開され話題を集めた本作が、再び新たな2バージョンで上映決定。6月5日(金)からモノクロver.、翌週6月12日(金)からはIMAX で公開される。
『殺人の追憶』『母なる証明』『グエムル -漢江の怪物-』など、数々の作品を手掛けてきた韓国の若き巨匠ポン・ジュノ。近年は『スノーピアサー』「オクジャ/okja」といった国際的作品を手掛けてきた彼だが、今回満を持して10年ぶりとなる韓国映画『パラサイト 半地下の家族』を完成させた。
『パラサイト 半地下の家族』は、相反する2つの家族の出会いによって生まれるストーリー。物語の始まりは、全員失業中“半地下”住宅で暮らす貧しいキム一家が、パク家へ赴くところからスタート。キム家の長男ギウは、ひょんなことからIT企業を経営する超裕福なパク家へ家庭教師の面接を受けに行くことになる。
そして、兄に続くようにして妹ギジョンも豪邸に足を踏み入れるのだが…。この相反する2つの家族の出会いにより、次第に物語は想像を遥かに超える悲喜劇へと加速していく。
2020年6月から公開されるモノクロ Ver.は、クラシカルな映像体験によって、カラー版とは異なる映画の世界観を楽しめるのが魅力。モノクロ Ver.を二度鑑賞したというポン・ジュノ監督は、「同じ映画がモノクロになることで、鑑賞体験がどれだけ変 わるものか、面白く感じていただけると思います。(中略)二度目は、映画がより現実的 で鋭く感じられ、まるで刃物で切りつけられるかのようでした。俳優たちの演技がさらに際立ち、より登場人物を中 心に映画が展開しているようにも思えました。」と感想を寄せている。
なお同時期に公開されるIMAX上映は、 デジタルリマスターされたバージョンで上映。臨場感がより際立つ最新の映像体験が劇場で楽しめる。
監督を務めたポン・ジュノと、貧しいキム家の父親・ギテク役を演じたソン・ガンホにインタビュー。2つの家族を通して、“二極化”する世界を映し出した『パラサイト 半地下の家族』はどのように構想され、形作られていったのかや、アイディアの源泉、撮影のプロセスについて話を聞いた。
まず、『パラサイト 半地下の家族』で描かれる2つの家族について教えてください。
ポン・ジュノ監督:キム一家は、むさ苦しい半地下のアパートに住んでいる低所得層の家族です。何の変哲もない平凡な生活を望んでいますが、それさえも叶えることができません。父ギテクは事業で数え切れないほどの失敗を重ね、元スポーツ選手の母・チュンスクも、これといった成功を収めることもなく、息子と娘は大学入試に何度も失敗しています。
それとは対照的に、IT企業の社長であるパク一家は、有能な新興富裕層の家族です。パク社長には美しく若い妻と、可愛らしい高校生の娘と幼い息子がいます。彼らは現代の都市エリート層の中でも、理想的な4人家族だと言えるでしょう。
半地下のアパートに住むギテクは活力がなく、貧しい中年男性。ギテクのキャラクターをどうとらえましたか?
ソン・ガンホ:今回私が演じた貧しい一家の父ギテクは、一言で言えば軟体動物のタコのようなキャラクターですね。一見無気力なように見えるけれど、タコは吸盤を持っていて、吸盤がどこかにくっつくとそこから落ちることはないわけですよね。
それと同じように、表向きはギテクも無気力に見えるかもしれないのですが、実は頑張って生きている。隠された吸盤を持った、まさにタコだと思いました。
登場する2つの家族を通してどのようなことを描きたい、と構想しましたか。
ポン・ジュノ監督:映画『パラサイト 半地下の家族』の中では2つの家族に関する話が物語の9割を占めています。ただ、たった2つの家の中の物語が2時間ずっと続きますが、ストーリーは単調ではありません。なぜなら、“家”というものの中に全ての世界、つまり、富や貧しさといった世界の全てが映し出されているからだと思います。
“家”が、貧しさや裕福さを象徴しているのですね。
ポン・ジュノ監督:なおかつ、それぞれの家が持つ“レイヤー”を細かく考えました。例えば、裕福なパク家の中には様々な要素が含まれていて、複合的なレイヤーが存在しています。それらは物語の序盤には明かされていませんが、映画が進んでいくにつれて徐々に明らかになる。
同時に、貧しいキム家の方は半地下の小さい家に住んでいますが、そこには地上が見える窓もあって、その中から近所の人が見えたり、酔っ払いが通ったりする。窓が、外の世界と繋がる1つの手段として描かれています。水害が起こった時には同じ窓を通じて水が家に浸食していきますが、その様子が貧しい人々の状態をまさに表している。
2つの家の物語を通じて、映画的な宇宙を作ることができるのではないかと考えたのです。