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『ビール・ストリートの恋人たち』のバリー・ジェンキンス監督にインタビュー“映画とは人を繋ぐもの”

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『ビール・ストリートの恋人たち』のバリー・ジェンキンス監督にインタビュー“映画とは人を繋ぐもの”|写真16
©︎Yoshiyuki Uchibori

映画『ビール・ストリートの恋人たち』を描いたバリー・ジェンキンスにインタビューを実施。本作及び、第89回アカデミー賞のにおいて作品賞を受賞した前作『ムーンライト』の話にふれながら、映画制作に関する情熱や、価値観について話しを伺った。

『ビール・ストリートの恋人たち』で描きたかったこと

映画『ビール・ストリートの恋人たち』は、ジェームズ・ボールドウィンの小説をもとにしたストーリー。70年代のニューヨーク・ハーレム地区を舞台に、レイプ疑惑で投獄された恋人のファニーを救うために奔走する少女ティッシュとその家族を描いている。

『ビール・ストリートの恋人たち』のバリー・ジェンキンス監督にインタビュー“映画とは人を繋ぐもの”|写真5

映画『ビール・ストリートの恋人たち』では、何を意識して制作されましたか?

僕が映画を撮る目的としていることでもあるのですが、登場人物たちの人間性を全て映し出すことに注力しました。何故なら彼らの人間らしいリアルな心理描写を映し出すことで、それに共感した観客たちが作品のキャラクターたちを追体験することができると信じているからです。特に僕はボールドウィンの描く美しい作品の中へと、観客たちを誘い、物語に共感してほしいと思っていたんです。

まず、何からはじめましたか?

19歳の女の子が夢や思い出や悪夢とどう向き合うか、どういう風に見えたり聞こえたりしているんだろうという事を理解する事が先決でした。

無実の罪で恋人は投獄され、自分のお腹の中には彼との新しい命が宿っていることに気付いたティッシュ。穢れを知らないピュアな少女の目には、この世がどのように映っているのか、簡単には理解できないことだったからです。それを理解した後に、始めて本のページからスクリーンへという作業がどんなものかが見えたんです。

『ビール・ストリートの恋人たち』のバリー・ジェンキンス監督にインタビュー“映画とは人を繋ぐもの”|写真7

実体験を投影されたりしましたか?

『ムーンライト』では、僕自身の個人的な経験がかなり描かれているのですが、この作品ではそうでもないですね。女性キャラクターが核となる作品ですから。そのため撮影中は女優たちの意見をオープンに受け入れてました。どういう場面で、どんな台詞に共感するかを教えてもらったりして。19歳の少女や中年女性の心理など、僕には分かりっこありませんからね。

『ムーン・ライト』を振り返って

映画『ムーンライト』 より
映画『ムーンライト』 より
© 2016 A24 Distribution, LLC

『ムーンライト』についても教えてください。

『ムーンライト』についていうと、あれは僕の半自伝的な物語といえますね。そしてそれが意味するのは、『ムーンライト』の原作を描いた作者タレル・アルビン・マクレイニーと僕が驚くほど似通った生い立ちだったということです。

生まれた地域も、僕たちの母親はどちらもドラッグ中毒だったという事実も一緒でした。撮影場所は僕の生まれ育った場所であるけれど、それは同時にタレルの故郷でもあるということ。タレルと僕の奇妙な共通点やそれぞれの経験を繋ぎ合わせたストーリーと言えるかもしれません。

※映画『ムーンライト』は、マイアミを舞台に、自分の居場所とアイデンティティを探すある少年の成長を、少年期・ティーンエージャー期・大人になるまでの3つの時代構成で描いている。

『ビール・ストリートの恋人たち』のバリー・ジェンキンス監督にインタビュー“映画とは人を繋ぐもの”|写真10

その『ムーンライト』では、アカデミー賞作品賞など全3部門を受賞されましたね。オスカーを受賞したことで、変わったことはありますか?

キャスティングがスムーズになりました(笑)スペイン料理屋のウェイター役を演じたディエゴ・ルナの話をすると、僕自身が昔から彼のファンでした。『天国の口、終りの楽園』なんかの作品をよく観たりしていて。

『ビール・ストリートの恋人たち』の脚本を書き始めた時、ディエゴの顔がふと浮かんだのだけれど“こんな小さな役を、まさか引き受けてくれるはずがないな”って思っていたんです。

けれど一度オスカーを獲得すると、皆僕の作品を観てくれて、俳優達が僕と仕事をしたがるんです。すごいでしょう?(笑)気がつけば彼も僕のオファーを快く引き受けてくれて、この作品に彩りを与えてくれました。

『ビール・ストリートの恋人たち』のバリー・ジェンキンス監督にインタビュー“映画とは人を繋ぐもの”|写真11

残念ながら、実は映画の中ではカットしてしまったディエゴの素晴らしいシーンがいくつかあって。僕は彼に申し訳なく思って謝罪の電話を入れたんです。

するとディエゴは「気遣ってくれてありがとう。でも実際にどのシーンが使われるかは全く気にしていないんだ。ただ、あなたと一緒に仕事ができて、映画の一部になれたことを嬉しく思っているよ。」と受け入れてくれて。そう思うと、やっぱり『スター・ウォーズ』の俳優は最高だね!(笑)素晴らしい俳優たちと仕事をできたことを、今でもすごく感謝しています。

映画『ムーンライト』 より
映画『ムーンライト』 より
© 2016 A24 Distribution, LLC

では受賞の前後で制作においての変化はありますか?

僕の映画はオスカーを獲得する前も、そしてその後もずっと変わりません。

『ムーンライト』で僕が初めてオスカーを受賞した時、僕にとっては“今あなたがやり続けていることを、これからも続けていきなさい”というメッセージのようなものに感じたんです。“結果だけをみて何かを作るのはやめなさい”ってね。だから僕は自分が作りたい作品を作り続けるし、これはずっと不変的なスタイルなのです。

Photos(18枚)

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