ティート トウキョウ(tiit tokyo)の2019年春夏コレクションが、2018年10月15日(月)に東京・渋谷ヒカリエにて発表された。なお、ランウェイには小松菜奈も登場した。
会場にのびたランウェイには、懐かしいポップアートみたいな空想の宇宙が描かれている。どこか未来っぽくて、でも懐かしくもあって。わくわくするような音楽が流れて、スタートした今季のティート トウキョウ。テーマは“from here”だ。
思い描いたのは、60~70年代、まだ未来や宇宙という異次元の世界にあこがれていたころのこと。そんなに遠くない過去、その時代に想いを馳せた女性が前に進むことで生まれる“新しい夢”を探していく。だから今季のワードローブには、過去も未来も指し示すモノが混在している。
物語の始まりは、真っ白なドレス。音楽はどこかフューチャリスティックな印象なのに、洋服はというとフューチャーというわけではない。紐を忍ばせたふんわり揺れるドレスは、装飾はほとんどなく、忍ばせた紐でキュッとギャザーを寄せているだけ。どちらかというと古来的なシルエットだ。足元はメタリックなパンプスで、そこにだけ潜んだ“未来”が、控えめな日本女性の美しさを想わせる。
ヌーディーなレースが登場したかと思えば、それに代わってビビッドなチェック柄が登場する。シルエットは変わらず緩やかで、でもその中で唯一プリーツスカートだけ動きがない。繊細なデジタルプリントを施し、いつもは動きが出るはずのプリーツを硬質的にすることで、近未来的に演出。その傍らで、動きを出したのは意外にも数種類の糸を混合したサマーツイードだった。
ツイードが未来的になったのは、おそらくポップなパッチが胸元に配されたからだ。ミニマルなシルエットかつ、カラーはレトロシックなベージュなのに、パッチワークだけでその姿はフューチャリスティックに姿を変える。ハンドニッティングの技巧を駆使したニットも同じで、温かみのあるニットはフリンジとともに配す一方、テクスチャーの異なるシースルー素材と共存させることで、新鮮な印象を抱かせた。そして、ニットを部分的かつ直線的に構成することで、ニット本来の温かみが軽減されているのが分かる。
テクスチャーをミックスして完成したワードローブは、懐かしさも新鮮味もあって、今より少し過去、空想を楽しんだそのときの“ワクワク感”みたいなものも宿っている。その気持ちはきっと、洋服を着る人の気持ちにも反映していく。あの頃思い描いた未来を今表現することで、過去と未来を往来するこの物語は、限りなく現実的なティート トーキョウの楽しいファンタジーだ。