山本:映像に関して言えば、色合いのバランスもよくできているな、と思いました。三日月宗近が着ている服の青って、昔の時代からすると作りづらい色じゃないですか。他の刀剣男士の衣装もそうだけど、そういう鮮やかな色を身に着けた人間が、木とか葉っぱが繁っている自然の中に入ってきてもすごく色合いのバランスがとれていて、むしろ立体感がある。映像として、きれいに見えるんですよね。
舞台版から数えると長い期間、三日月宗近というキャラクターと向き合ってきた鈴木さんですが、どのように人物像を作り上げていったのでしょうか。
鈴木:演技をする現場に行って、周りのみんなの空気感を探りながらキャラクターを作り上げていった部分が大きいと思います。ベースとなる刀剣が、打たれてから武将に受け継がれて……というような刀剣自体の歴史を踏まえた上で、人の形をした“三日月宗近”を考えていくのですが、現場の雰囲気を汲みながら役を作っていく感覚は、舞台でも劇場版でも同じだったかな。でも、今回はより一層みんなで作り上げている感じがして、舞台の初演を思い出せたような気がします。
山本:ちなみに、三日月宗近を演じる時は、瞬きはどうしていたの?
鈴木:極力しないようにはしていました。
山本:やっぱり。三日月宗近って、無機質というか、色々なキャラクターの中でも異質な感じがしますもんね。
山本さんは映画からの参加になりますが、完成した『映画刀剣乱舞』を見てどう思いましたか?
山本:これは新しいジャンルの作品ですね。一見非現実的な物語だけど、ハリウッド映画みたいな説得力があるな、と思いました。未来から戦国時代に刀剣男士達がタイムスリップしてきて、未来を操るとか操らないとか、色々な設定が意外と全部腑に落ちていくんですよ。ハリウッド映画も、最初タイムスリップしてきた男が現代の人と会って、ちょっとしゃべったら10分ぐらいでタイムスリップしてきたことみんな信じちゃうでしょ(笑)?
鈴木:確かにそうですね(笑)。
山本:よく考えたら「もう信じちゃってるんだ!」って思うけどね(笑)。物語の舞台になった戦国時代って、物理学も化学も進んでいない時代だから、未来の概念すらわからないと思うんですよ。「そもそも未来ってどこなんだ?」みたいな。色々なことが“わからなすぎる”状況の中にあると、現代から見れば非現実的なことも、難なく受け入れざるを得ないような気がします。
あとは、僕が演じた織田信長のキャラクターが影響するところも大きいと思います。織田信長って、非現実的とか未来とか、そんなことにいちいちひっかかって、「お前はどこの誰だ!」とか言い出すような男ではない気がしませんか?
どちらかと言うと、「よくわかんないけどお前が言うことはわかった、じゃあこの先どうする?」っていう器の大きさがある男だと、僕は思うんですよね。そういうキャラクターのフィルターを通して物語を進めていくから、日本風のSFみたいな設定も、現実味を帯びて飲み込めるのかな、と思います。
織田信長というキャラクター自体が、『映画刀剣乱舞』の中で史実とフィクションの入り混じった役でした。
山本:既存のイメージや史実がある中で、『映画刀剣乱舞』で描かれている“織田信長”像が、僕にとってはすごくしっくりきました。確かにフィクションの要素もあるんですけど、違和感がありませんでした。というのは、例えば「本能寺の変」1つとっても、教科書通りの史実と、実は違う結末だった、という史実の両方が存在しているんです。でも、現代の僕らからしたらそれぞれの史実が嘘か本当か、立証するのは難しい。だから、言ってしまえば、映画の中で描かれている“織田信長”には、嘘は何もないんですよ。
鈴木:確かに、戦国時代に織田信長が実在したかどうか分からないという説まであったりしますものね……。
山本:真実を知らないからこそ、想像して世界観を作り上げられるから、色々な史実や設定も「全部ありだわ」と思っちゃったんですよ。戦国時代っていう時代の緩さと、「刀剣乱舞」の物語の設定の緩さがあってこそだと思います。
現代の先生たちが「いや、この時代にこんなことはありえない」とかよく言うけど、「その時代に生きていたわけではないのに100%言い切れますか?」って言いたくなる時ありますからね。例えば200年、300年後の人が90年代は携帯電話が……って言うかもしれないけど厳密にはポケベルで…とか細かいことって時が経てば経つほどわからなくなりそうじゃないですか。
鈴木:戦国時代だからこそ逆にリアルなんですね。現代だと色々な記録が残りすぎているから、フィクションとノンフィクションがはっきりしてしまう。
山本:未来人とか神が登場する設定をもし現代の物語に持ってきたら、本当のファンタジーになっちゃうよね。昔はきっと色々信じられないようなことがあったんですよ。徳川家康が生きている間にUFOを見たっていう記録も残っているって言うし……。ちょっとオカルト的な話になってくるけど(笑)。でも、そうなってくると、実際に刀剣男士がいたかもしれないですよね?誰も、確実にいなかったとは言えないですから。
鈴木:『刀剣乱舞-ONLINE-』のゲームの作品世界にも共通するところですが、物語に想像する余白があるからこそ世界が広がっていくんですよね。映画版でも「刀剣乱舞」ならではの、広がりのある展開を楽しんでいただけると思います。
山本:本当に面白かった。戦国時代の世界観をこれだけ広げさせられるのは「刀剣乱舞」だけですよ!どうですか?このまとめ(笑)。
メガホンを取るのは、映画『百瀬、こっちを向いて。』や『暗黒女子』の耶雲哉治。さらに、アニメ『進撃の巨人』や特撮テレビドラマ『仮面ライダー電王』など数多くのアニメ作品や特撮モノを手掛けてきた小林靖子が脚本を担当する。"実写映画×特撮アクション"といった2人のコラボレーションは、『映画刀剣乱舞』において期待したいポイントの1つになるだろう。
主題歌は、西川貴教が布袋寅泰とタッグを組んだ「UNBROKEN (feat. 布袋寅泰)」。『映画刀剣乱舞』のために特別に書き下ろされた「UNBROKEN (feat. 布袋寅泰)」は、布袋寅泰が作曲・ギター、西川貴教がボーカルを務め、「最後の最後に最上のタマシイを見せろ 生きざま 死にざま 守るべきもの守るために果てるなら 何度だって何度だって咲 き乱れてみろよ」と歴史を守るため命を賭して戦う刀剣男士たちを表現した内容となっている。