タカヒロミヤシタザソロイスト.(TAKAHIROMIYASHITATheSoloist.)の2018-19年秋冬コレクションが、イタリア・フィレンツェで発表された。
アンダーカバー(UNDERCOVER)の高橋盾と挑んだ今回のコレクション。昔から仲の良かった2人が一緒にやろうと決めたのは、ちょうどショー発表の1年前だったという。宮下が「disorder-order」、高橋が「order-disorder」。2つの言葉を並び替えただけでテーマは表裏一体。テーマを共有はしたものの、その後2人がそれぞれの完成形に出会ったのはピッティ・ウオモの会場だった。
キーワードには「サバイバル」を掲げた。激しいものではなくて、サバイバルに置いて身を護るものだ。それを表現するため、ファーストルックから変わらず、パンツとディッキーとノースリーブシャツ、そしてマスクの組み合わせを軸としている。
不変的なベースに、臨機応変に対応できるようなアイテムが追加されていく。前から見るとベストやリュックのストラップに見えるアイテムは、ジャケットに内装されたベルト。寒い時にはそれを着ればいいし、暑い時にはそれを脱げばいい。もっと言えば、脱いだ時に手荷物になるのはスマートではないから、そのまま背負ってしまえばいい。ジャケットがジャケットらしく振る舞う必要なんてない。
アウター類には、必ずと言っていいほど内ポケットが付いていて、袖には“第二の袖口”とも言わんばかりにジッパーが施されている。レザーポンチョの裾から見えるフリンジのディテールは、カシミアのマフラーをまるでライニングのように贅沢遣いしている証。宮下らしい創造によって、着心地のいい服の在り方が問われているみたいだ。
頭には頭巾、ならば足元も二重構造で身体を保護する。リカバリーサンダルを履いたうえでさらにオーバーシューズを履く。シューズは、レースアップが中についており、その上からもう一層、止水ジップ付きのアッパーが備わっている。リカバリーサンダルはウーフォス(OOFOS)、オーバーシューズはネオス(NEOS)、シューズはサロモン(SALOMON)に製作を依頼したオリジナルモデルである。
終盤で登場したのは、 “エマージェンシー”スリーピングバッグを解体して仕立てられた洋服。オレンジのカラーが印象的であり、クラシカルかつフォーマルなジャケットと組み合わせることで、秩序を揺るがす。しかし、身体を保護するという面ではうってつけのファブリックだ。フィナーレに登場した“エマージェンシー”ポンチョには、「The Day The World Went Away」の文字が配された。“今日は終わったが、明日は新しい日になる。新しいことができる。未来へ向かっていく。”新たな始まりを意味するポジティブな想いだ。
ランウェイでみた完成形は、個性的でアンユージュアルな印象かもしれない。しかしそこには、洋服を着るうえで宮下自身も大切にしている着心地の良さや洋服の優しさ、未来に向けたメッセージという、これまでの創作の延長線上にある大切なものが潜んでいる。