ウィーウィル(WEWILL)の2018年春夏コレクションが、2017年10月11日(水)東京で発表された。”風を孕んだ洋服を作りたい”とデザイナー福薗英貴が願った今季は、デビューショーの昨季とは打って変わり、開放感溢れる秩父宮ラグビー場が会場となった。東京の秋夜は、彼の希望通り穏やかな風が吹き心地より気候だった。
「風を孕むシルエット」このキーワードを表現したのは、軽い素材たち。夏らしいシアサッカーや柔らかなコットン地、そしてカーゼのように薄いファブリック。フォルムはゆったりとしたオーバーサイズが基本で、ロングコートもラペルの大きいジャケットも服地との間に程よく風を通し涼しげに映る。前後をアシンメトリーにカットした裾や長く伸びた身頃は、歩みに合わせて楽し気に舞い踊り、制作起点を強く印象付ける。
そしてもう一つ、デザインのベースとなったキーワードがある。福薗英貴の幼少時の記憶だ。着物が好きだったという純粋な気持ちが、カシュクールトップスを生み、短パンでわんぱくに遊んだ日々はキュロットやショートパンツへと形を変えた。
背広に憧れ隠れてコッソリ着てみた父親のスーツ。これは当時のサイズ感のまま蘇り、ビッグショルダーのボックスシルエットジャケットとして登場する。中学の時にはまったリーボック(Reebok)のスニーカーは、デザイナーになった今、コラボレーションピースとして足元を飾った。
ラフな印象と落ち着いた色彩に溢れたランウェイ。その先に灯された青く幻想的な光からどこかで嗅いだことのある和の香りが漂っていた。聞くと、福薗の実家の香りを再現するために竜涎香をたいたという。
ショーの終わりを告げるのは、日本人グラフィックデザイナーの鶴田一郎による美人画の数々。化粧品メーカー・ノエビアのCM広告として使用されていた鶴田の絵は、福薗少年に初めて女性を意識させた、美の記録のようなものだという。それらはシャツやカットソーなどに描かれ、ランウェイにずらりと並ぶ。メンズ服のコレクションであるが、ラストは女性たちの闊歩で幕を閉じたのであった。