映画『ベイビー・ドライバー』が、2017年8月19日(土)より新宿バルト9ほか全国の劇場で公開される。
主人公は、天才的なドライビング・センスを買われ、犯罪組織の“逃がし屋”として活躍する若きドライバー、通称「ベイビー」(アンセル・エルゴート)。幼少期の事故の後遺症で激しい耳鳴りを持病に持つ彼だが、音楽にノって外界から完璧に遮断されると、耳鳴りは消え、イカれたドライバーへと変貌する。そんな最高のテクニックを発揮するための唯一無二の小道具は、完璧なプレイリストが揃っているiPodだ。
ある日、運命の女の子デボラ(リリー・ジェームズ)と出会ってしまったベイビーは、犯罪現場から足を洗うことを決意。しかし、彼の才能を惜しむ組織のボス(ケヴィン・スペイシー)にデボラの存在を嗅ぎ付けられたことから、無謀な強盗に手を貸すことになり、彼の人生は脅かされ始める。
主人公ベイビーには、その甘い顔立ちで世界中の女性を虜にした『きっと、星のせいじゃない。』『ダイバージェント』のアンセル・エルゴート。
ウェイトレスとして働くデボラを演じるのはリリー・ジェームズ。『シンデレラ』のみずみずしい演技が記憶に新しいイギリス人女優。
ベイビーとチームを組むメンバーで、凶悪な犯罪者バッツ役にアカデミー主演男優賞を獲得したジェイミー・フォックス、犯罪組織の一員バディ役にTVシリーズ「MAD MEN マッドメン」で大ブレイクしたジョン・ハム、そしてその恋人ダーリンにエイザ・ゴンザレス。さらに、組織をまとめるボス役を、同じくアカデミー賞を二度受賞の大ベテラン、ケヴィン・スペイシーが務める。
『ベイビー・ドライバー』の監督を務めるのが、『ショーン・オブ・ザ・デッド』『ホットファズ-俺たちスーパーポリスメン!』『ワールズ・エンド 酔っ払いが世界を救う』などを手がけたエドガー・ライト。サイモン・ペグとのコンビで、ホラー×アクション×コメディなど、様々なジャンルをミックスした独自の世界観を作りだし暴れまわってきたイギリスの新鋭だ。
ハリウッド長編映画としては監督デビュー作となる『ベイビー・ドライバー』最大の見どころは、ストーリー全体がベイビー自身のサウンドトラックのようになっており、彼が聞く曲に合わせて物語が進んでいくというユニークな構成だ。
導入で主人公ベイビーは真っ赤なスバル・インプレッサを乗りこなし、軽快なロックミュージックとともに天才的なドライビング・テクニックを披露するが、クライム・ムービーに不可欠な大迫力のカーチェイスと銃撃戦に加えて、テンポの良い音楽とカーアクションがシンクロしていく。このシーンに限らず、作品全体が流れる楽曲に合わせた構成となっており、“カーチェイス版『ラ・ラ・ランド』”とも評される、ミュージカル風の要素をも取り込んだ新感覚の作品となっている。
オープニングを飾るジョン・スペンサー・ブルース・エクスプロージョンの「ベルボトム」、疾走感を煽るダムドの「ニート・ニート・ニート」、劇中でベイビーもNo.1フェイバリットと語るクイーンの「ブライトン・ロック」、マーサ・リーヴス&ザ・ヴァンデラスの「ノーホエア・トゥ・ラン」など、ロック、オルタナティブ、ソウル、ジャズ、ダンスと様々なジャンル、そして幅広い年代から監督によって選ばれた全30曲が、物語とシンクロしながら各シーンを彩る。
今回、エッジの効いた音楽センスとヴィジュアルの魅せ方、そしてさまざまな映画の引用で、世界のファンから期待を集めているエドガー・ライトにインタビューを実施。自身の映画哲学や、『ベイビー・ドライバー』の制作秘話などを語ってもらった。
『ベイビー・ドライバー』は、デビュー作品以来、初めて脚本全てを手がけた作品です。オリジナル作品の存在意義について、エドガー・ライト監督はどのように思っていますか?
凄く重要だと思っています。『ベイビー・ドライバー』を作る前と後で、オリジナルの作品への想いは全く変わっていない。シリーズものの作品と同じくらい、オリジナル作品は存在すべきだし、ハリウッドがシリーズものにかける時間を、オリジナル作品にも同様に費やす事ができれば、もっと多様性のある映画界になるはず。
ただ、オリジナルの作品を作って、それがどのように世界に受け止められるかはわからない。正直プレッシャーも大きくて。少し上手くいかなかっただけでも、メディアには「観客はオリジナル作品を求めていない。それは興行収入が示してる」と酷評されてしまいます。
だからこそ、これだけ周りに大作のシリーズものがある中で、『ベイビー・ドライバー』が興行収入と観客の評判を上げているということは、凄く嬉しい。そして、仮にこれが僕の作品ではなかったとしても、「オリジナルの作品がこれだけ頑張っているんだ!」という事実に、僕自身も誇らしく感じていたはずです。
エドガー・ライト監督のオリジナリティとして、様々なジャンルをミックスする作風があげられます。それはどのように生まれたのでしょうか?
一言で答えるにはともて難しい質問です。まず映画、音楽、そして文学とか、様々なアートへの愛情がベースにあり、そこに僕の人生経験そのものが加わって、自分の感性が磨かれているのだと思います。これまで映画が大好きで沢山の作品を見てきましたが、この自分の感性という名のフィルターを通して、それらを吸収してきました。
そう考えると、自分が手がけた作品、特に『ベイビー・ドライバー』に関しては、シンプルに自分の“パッション=愛するもの”を一つに凝縮して生まれた作品、と言えるかもしれません。