トム ブラウン(THOM BROWNE)が、2017-18年秋冬メンズコレクションを2017年1月22日(日)にフランス・パリで発表した。
蛍光灯が吊るされた正方形の会場。それぞれの下には極厚のフェルトが大小こだわらず、不規則に積まれている。なんとも不思議な空間に現れた男が身に着けているのは、グレーのヘリンボーンでできた全身スーツ。そこにはくるみボタンのような小さな“マル”が、平面上でジャケットのシルエットを具現化するように並んでいる。
ゆっくりと、そして次々に現れる同じ風貌の彼らは、よく目を凝らすとそれぞれ“マル”の位置が異なっている。ダブルブレストジャケット、ブレザー、そして中にベストを合わせた3ピーススーツ。ボトムスも同じで、ハーフパンツやロールアップが“マル”だけで認識できる。中に着たシャツの袖は腕の2倍もあろうかというほど長く、裾を引くものすら登場している。
彼らが去っていくと、次に登場したのは平面的なルックだ。手に持ったバッグまでが薄くて平ら。そして、洋服はというと先ほどとは対照的に、まるで机上に並べたパターンをまるごとペタンと体に貼り付けて再現するかのよう。袖や身頃はもちろん、パンツの見返しやベルト部分などディテールパーツまでが“マル”によって止められている。先ほどと同じく形は様々で「おそらくこの形になるのでは…」と、平面から立体の構想が膨らんでいく。
最後には、それらパーツが接続された完成形が列を為す。完成しているとはいっても、平面をただ糊でつなぎ合わせただけのような違和感がある。それもそのはず。肩の部分や背中の中心線の中にはボタンで組み立てられている部分があるからだ。それでもやはり明確なのはテーラリングの美しさ。計算されつくされた設計が、この難解な洋服を可能にしている。