人気スタイリスト望月唯氏によるブランドHOWL(ハウル)の2011-12年秋冬コレクションのテーマは「PUNK…NEW WAVE…GRUNGE…WHAT ?」。1980年代から 1990年代にかけて流行した PUNK、NEW WAVE、GRUNGEを経て、「2011年はなんだろう。。。?」 という疑問から生まれたコレクションだ。今季より、デザイナー山岸慎平氏、プロダクトマネージャー高坂圭輔氏が加入し、望月唯氏のディレクションの下、デザイン性、機能性の更なる強化が実現した。新たなHOWLとして新たなスタイルを提案する彼らに、ファッションや服作りへの想いや世界観を語ってもらった。
望月氏(以下敬称略): 2009年にHOWLをスタートしてから1人でやってきたんですけど、1人ではやりきれなくなってしまったというのが元々の理由です。圭輔とは元々面識があったし、一緒に何かできたらいいなと思ってました。慎平のことも知ってて、慎平はデザインができるし、圭輔は生産ができるし、僕がスタイリストでディレクターとして、3人でやればぴったりじゃんってことになったんです。
望月: この2人とは普段着てる服も似てるし、好みも近くて。それに、彼らの作っている服を見たんですけど、好きなテイストだったんです。
望月: 初回にしては良い出来だったと思います。もちろんまだ足りない部分もあるんですけど、洋服って何年も作っていかないと良くなっていかないので。
山岸氏(以下敬称略): 3人で作ってて楽しかったです。
高坂氏(以下敬称略): 望月さんはずっと雑誌で見ていた人なので、まさか一緒に仕事することになるとは思わなかったです。望月さんと一緒にやってると勉強になるし、自分たちのブランドとは違うベクトルでモノ作り出来て楽しいです。そして、望月さんと慎平の2人のアイディアソースが融合することで、2人にしか作れないものができるんだと思います。
望月: 僕自身、80~90年代のファッションに影響を受けているので、それを全部ミックスしたらどんな感じになるのかなと思ってやってみました。アメリカやイギリスの当時のロックバンドとかカルチャーを服に落とし込みました。具体的には、トレンドというよりも、当時の写真集とか雑誌に載ってるミュージシャンのファッションなんかがアイディアソースです。
望月: 90年代にRay Gunというアメリカの雑誌があって、それは音楽雑誌なんだけどファッションもおもしろくて、それを2人に見せて、こういうのがやりたいんだって伝えたんです。そしたらこの2人もそのテイストを好きになって。代表的なミュージシャンはニルヴァーナとかなんですけど、実は僕はニルヴァーナより上の世代で、どっちかっていうとソニックユースとかが青春時代だったんで、そんなに影響受けてないんです。ダイナソージュニアとかも、なんか若い子ががんばってやってるなっていう感じでした。でも(ニルヴァーナの)カート・コバーンもファッションアイコンですし、ファッションからも影響受けてるかな。
山岸: 望月さんは、デザインを僕に好きなようにやらせてくれる。その上でいっぱいヒントをくれるんです。Ray gun(イメージソースになった雑誌)のことも、初めて見たとき、すごくかっこよくてパワーを感じました。デザインとか書体とかも含めて今見ても古くさくない。今回のコレクションも、5年後見ても古さを感じないようなものにしていきたいと思って作りました。それで、スタイリングされたコレクションを写真で見たときに、自分で作ったものじゃないように見えたんです。自分で考えて作ったのに、それ以上のようなものになった気がして不思議な感覚でした。このパンツもベストも自分で考えて作ったのに、自分の頭の中を超えたものがスタイリングによって実現してた。すごいなって思いました。こういうふうに出来上がってくるんだって。だから現場にいて楽しかったです。
望月: 僕はダウンのライダースかな。こういうのってありそうでないよね、ということで作ってみたら意外といい感じになって。ライダースって革なんで、ダウン入れたらバランス悪くなるかなって不安だったんですけど、細身にできたので着てもだぼっとしない。 今回MA-1も作ったんですけど、MA-1って難しい服で、本物のMA-1ってフォルムが丸いんですよね。それで、着てみると実は格好悪かったりする。それを細身に作って、襟元をスタンドネックみたいにしたりとか工夫したら、僕らに似合うようなMA-1ができたんで。納得してます。
高坂: 僕はライダースのベストかな。ブルゾンの上にベストを合わせたりとかそういうのが好きなんでやりたいなって思います。
山岸: 僕は着るとしたら、このシャツ(ワイン色のシャツ)がいいです。
望月: これ?意外だなあ。
山岸: 思いの他良かったなって思って、前立てのへりの仕様とか気に入ってます。ほんとは白のMA-1も好きで、自分で着たいから絶対僕買うんでって言って作ったのに、実際に出来上がってみたら全く似合わなくて、自分でびっくりしちゃった。
望月: (白のMA-1って) 難しいなって。なんで今までなかったのかが作ってみてわかったよね。でも、カーキは定番だけど白ってないよねってことで作ってみて、白もかっこいいなって思いました。
望月: 作る過程ではスタイリングを全く考えずにいたんだけど、いざ全部出来上がってスタジオに集めてその場でスタイリングしたら意外とうまくはまってビックリしたんです。重ねてもしっくりきたんです。このTシャツをネルシャツの上に着るとか、ぱっとやってみたら意外とはまって。このライダースのベストをMA-1のブルゾンに重ねても意外と合うじゃんっていうことになって。その場でスタイリングしながら、かっちょいいかっちょいいって(言い合ってました)。不思議なもんだね。
望月: あれね、重力も全部計算式に入れてやってるんです。HOWLのホームページも制作してくれているWebデザイナーの藤田くんにお願いしたんですよ。前にあれに近いものを作ってもらったことがあって、それを覚えてて今回のルックブックがああいう形にならないのか相談したんです。そしたら思った以上によくできてびっくりしました。
望月: お客さんと直接コミュニケーションがとれたのが勉強になりました。こういうお客さんが買ってくれてるんだとか、こういうのをほしがっているんだとか分かったし、それを生で聞けたのですごくいい機会でした。HOWLを好きで着てくれてる方々にほめてもらえてやる気になったし、こういうのがほしいんですってリクエストをもらったり、一緒に写真撮ったりもしました。
高坂: 店頭で接客した事なかったし、初めての体験で楽しかったです。望月さんのファンがこんなにいるんだって思ったし、いい経験になりましたね。
望月: 春夏はがらっと変わった感じになると思います。HOWLのイメージを残しつつ素材にもっとこだわり、もう少し大人っぽい感じにしていこうと思います。デザインもちょっと攻めて行こうかなとも思ってます。ここ2、3年不景気で洋服も売れなくなってきているので、自分の中で保守的になってた部分があるんですけど、いろんなお客さんに会ったことで、本当に洋服が好きな人ってとんがったことが好きだし、そういう人がHOWLを買ってくれるってことがわかったんです。そういう人に買ってもらえるような服を作りたいって思ってます。
望月: 組み合わせは好みなんで、楽しんでくださいとしか言えないんだけど、あんまり人がやってないようなコーディネートにどんどんチャレンジしてほしいです。昔は訳の分からない(格好の)人とかたくさんいたんですよ。なんだこりゃっていう人がすごいいっぱいいたんです、原宿とかに。でもそういう人も減っていったので、また若い子の中にそういう訳の分からない感じの人がいっぱい出てきた方が世の中楽しいと思います。
望月: 気になってるのはワンピース。今日着てるこの服、実はレディースのワンピースなんです。これ見たときにすごくいいなって思いました。最近こういうちょっとフェミニンなものに魅かれてます。こういうのが気分です。だから次シーズンもこういう感じになると思います。
高坂: 今日の格好はめっちゃカジュアルですね。白いTシャツに黒のパンツだけ。夏は黒い肌に白いTシャツが夏っぽくていいと思ので、白い無地Tを着てることがが多いですね。あとは最近ノーカラーの洋服に惹かれます。ノーカラーのシャツ、ノーカラーのブルゾンなどですね。
望月: おしゃれな子に着てほしいですね。かっこいい子たちに。僕らがかっこいい男子像ってのが3人それぞれあるんですそして、本当にHOWLのこういうスタイルが好きな人に着てほしいです。
望月: 雰囲気があって、そして女の子にもてるってこと!
望月: かわいい子。だって、かわいい子にもてるってのが男が憧れる男子像じゃないですか。だからがんばって!(笑)
山岸: (かっこいい男子像は)やっぱりベンジー(Blanky Jet Cityのギターボーカル)。理想のヤンキー像です。その影響か名古屋弁も好き。(笑)
高坂: 僕は元々リバー・フェニックスが好きだったんです。色気もあるし男らしいところもあるし、影響を受けましたね。小学校の頃、初めて見た映画が「スタンド・バイ・ミー」で、ああいうかっこいいヤツになりたいなってずっと思ってました。
山岸: そうなんです。同じ文化を共有してないというか。例えば、ニルヴァーナなんかも、僕達はファッションを知ってからその世代の文化や音楽とかを知ったんですけど、望月さんと話して、ファッションじゃないところから見たその文化そのものをちゃんと聞けました。
望月: まさにニルヴァーナの時代、僕はもう大人だったけど彼らは8歳とかだったんです。でも3人の基本的な好みは近いし、かっこいいと思うことも近い。だからこうやって仕事してるんですけど。
山岸: 僕は日中外出ないんです。だから3人では飲んでばっかり。
望月: 話題は9割くらい女の子の話。仕事のときは100%洋服の話だけどね。
山岸: 望月さんと話してて、文化や音楽について、自分が知ってると思ってたけど実はちゃんと知らなかったりで恥ずかしい思いもしたり、、、なんで今またBlanky Jet Cityのライブ盤も全部買いなおしました。(笑)
望月: 僕はBlankyのスタイリングをしてたからね。
山岸: 意外としゃべる人だなと思いました。前にも展示会とかで望月さんに会ってたけど、そのときは全然話さなかったんで、無口な人だと思ってました。
高坂: 最初は正直怖かったですよ。俺はあまりしゃべらないって印象でした。けど、歳もひとまわり以上離れてる僕にでも独立したときにアドバイスしてくれたり、いろいろと気にかけてくれて、凄く助けて頂き尊敬出来る良い先輩です。こんな人になりたいなって思いますね。
望月: 泣いてます。 (笑)
望月: ブランドを続けていくのは大変だというのが実感。でも楽しんでやってます。RICOの時は大きい会社でディレクターという形だったけど、HOWLは完全にひとりで始めたブランドなので好きなことができる。誰にも文句言われないし。ほんと楽しんでやってます。
望月: スタイリストの仕事でも洋服作って貰えませんかって話もくるようになったし、あと、洋服のことがよく分かるようになりました。例えばスタイリストとして服を扱う時にも、デザイナーの思いとか洋服の作りとかがよく分かるようになった。ブランドを始めたことがすごく自分のためになってると思う。
望月: もちろんもっともっと大きくしていきたい。まだまだ売っていかなくちゃならないし、それにプラスしてクリエイティブなこと、おもしろいことをやってきたいなと思ってます。あとは、ヴィジュアルとか作ったり、ショーまではまだ考えてないけど、プレゼンテーションみたいな形もできるんであればおもしろくなるかなと。
望月: ファッションは楽しいので、楽しんで下さい。あと、洋服買ってください。HOWL買ってください。(笑)
高坂: わりと僕達と同年代の人たちがお客さんに多いと思うので、ファッションを一緒に楽しめたらなって思います。そして、新しい何かを生み出したい。僕達が憧れてた90年代ってほんとかっこよくて凄く憧れてたし、そんな先輩達みたいになりたいって思ってた。ああいう90年代みたいで、でももっとかっこよくなった2010年代ってのをやりたいなって思います。
コレクションのルックブックをめくりながら、冗談を交えながら熱心に語り合う3人の姿に、新生HOWLのスタジオの雰囲気が伝わってくるようだった。最後の撮影は、それぞれの着こなしでの3ショット。ちょっと照れながらも、望月氏のリードでかっこよく決めてくれた。シルエットやディティール等随所にこだわりが光るクールなHOWLのスタイルは、おしゃれに敏感な男子にとって今季も注目必須だ。ファッションと音楽、カルチャーへの熱い想 いが作り出すこだわりのアイテム達を、ぜひ店頭で体験してみてほしい。
HOWLオフィシャルサイト: http://howl.jp/
HOWL STORE(オンラインストア): http://store.howl.jp
interview by Hamae Yamamoto