バレンシアガ(BALENCIAGA)が発表した2016年春夏メンズコレクション、テーマは「Urban Utility(アーバン ユーティリティ)」。建築家オスカー・ニーマイヤーが設計した現代都市「ブラジリア」と、 その一方で存在する有機的で穏やかな風土。そうしたブラジルの二面性からインスピレーションを受けた、ラグジュアリーなコレクションとなった。
一言で表すならシンプルでモダン。しかし今季はより細かく見ていくことで、ブラジルの情景がだんだんと現れてくるような、深みのあるコレクションだと言えるかもしれない。まずは何と言っても、今シーズンの骨子をなす、構築的なシルエットと控えめな色合い。これはブラジリアに立ち並ぶ、数々の現代建築と共通する部分が少なくない。
ここでもうすこし、ディテールに寄ってみよう。それでもモダンな印象は変わることなく、むしろ輪郭を強めることになる。始めに目に飛び込んでくるのは、そのジップとポケットの多さ。パーカーに付けられたのは、なんと18個ものポケット。市街地の密集した建物を思わせるとともに、大胆に配されたジップが無機的な表情をプラスする。またダブルレイヤードラペルといった特徴的なディテールは、ジャケットやクラシックコートに取り入れられ、建築的な印象をより高める。ナイロンやシルク、光沢のある素材感もまた、シャープなイメージを増強しているようだ。
と、ここまではその無機的な側面に焦点を当ててきたが、それがアレキサンダー・ワン手がけるバレンシアガにとって特別でないことは、過去のコレクションを見れば一目でわかるはず。反対に今シーズンは、そこからすこしばかり肩の力が抜けたような、そんな印象すら受ける。手の施されない荒れたままの自然と、トロピカルなジャングル。そう、ブラジルの持つもう一つの情景は、控えめながらも確実に姿を現しているのだ。
例えばグラフィック。トップスやパンツに落とし込まれたのは、まるでジャングルの生態系を象徴したようなパイソン柄に、うっすらとニュアンスを加えるグレーのシャドウ柄。ビーチウェアのように、短く軽やかなショーツも登場した。さらにブーツは南アメリカのアタカマ砂漠にちなんで「アタカマ」と名付けられ、ラバーやカーフスキン、コットンキャンバスなどの異素材をミックスしながらアウトドア風に仕上げられている。