ネ・ネット(Né-net)が、2015年春夏コレクションを2014年10月17日(金)に渋谷ヒカリエにて発表した。
「ポジティブな意味で、歳をとったからなのか、前よりも自分の周りのことだとか、日本のこととか、環境のこととか考えたりするようになりました」とデザイナーの高島一精が話す。ここ最近は、地方に行き現地の人と触れ合ったり、物づくりしたりしているという高島。そのためコレクションでは、日本各地の景色や動物、伝統品と見られるデザインが、至る所で発見できる。しかしあえて「テーマは日本」となどど語ることはせず、ネ・ネットらしい肩肘はらない日常着の中に、そうした要素が楽しげに溶け込んでいるというのが、今季のすべてだ。
ランウェイは、ドット柄の縁で飾られた畳。デザイナーの出身地である熊本県八代市で作られた畳は、客席にかすかに草の匂いを届けた。ファーストルックを飾った水原佑果は、薄手のフリルトップスから金魚が描かれたタンクトップを覗かせ、唐草模様の巾着バッグを手にぶら下げて静かに登場。よく見ると足元は足袋のようなソックスを履いていて、彼女がランウェイを降りると、下駄のサンダルを履いて戻っていく。
手ぬぐいのようなスカーフ、お面のような藁の前掛け、富士山型のとんがりハット、日光東照宮の三猿ブローチ……。続いて姿を見せるモデルたちは、Tシャツ、パーカ、膝下スカートといったカジュアルなスタイルに、日本文化を表す小物を身に着けている。もちろん洋服の柄も、青海波や籠模様など、和を感じさせるものが多く、ひとつひとつ見つけるごとに楽しい気持ちになる。
中盤に登場したプルオーバーのスタイリングも面白い。デニムのサルエルパンツやワークパンツに合わせたスウェットには、日の丸が顔を出していたり、大きく富士山が描かれていたり。さらにウエストを見ると「ね・ねっと」の平仮名ロゴが入った、柔道帯のようなベルトがあり、手にしているクラッチバッグには鬼の顔が。それでも、モチーフが可愛らしく、抽象的に描かれているため、ユーモアのあるデイリーウェアとして成り立っているのだ。
その後も、懐かしい袢纏(はんてん)風のアウターや、動物の置物やこけしが描かれたカットソー、ナマケモノモチーフのシャツやスカートなど、心温まる個性豊かなデザインのワードローブが展開された。いわゆる“ジャポニスム”のように大それたアイディアではなく、日本独自のほのぼのとしたリアルな魅力。それは、ネ・ネットの日常的なデザインと一緒になり、今季のコレクションとなったのだ。