2014年10月16日(木)、ジョウタロウ サイトウ(JOTARO SAITO) / サンサイ サイトウ(SANSAI SAITO)が、東京・渋谷ヒカリエにて2015年春夏コレクションを発表した。
斉藤三才と斉藤上太郎親子が手掛けた最初で最後の競演となる今シーズン。今回は、かねてより探求する「進化する伝統」と「伝統こそ最新」というキーワードを具現化することに挑戦した。
息子、上太郎は「親子とはいえ違う人間ですので、僕は2面性のある光と影のような、一般的な和装から少し離れた色使いを意識して作りました」と語る。また父親である三才は、「着物は飾って美しいのではなくて、たまたま僕の服をきた人が、“私も着てみたい”、“僕も着てみたい”と思ってくれるのが一番良い。かぐや姫のような伝統的な着物も勿論美しいですが、着物は工芸品という類には当てはまらない、私も僕も着てみたいと思わせるような着物を作っていたいんです」と、着物への想いを述べた。2つのジェネレーションが発信する伝統の可能性、エレガントでセクシーな様式美は、見る者をうっとりさせる。
会場では、風船のような和紙の電球がランウェイの左右を埋め尽くす。哀愁漂うメロディーと共に、スクリーンにはドラマティックな月が映しだされた。突然曲調がアップテンポに変わり、和紙の電球が赤・青・緑とメロディーに合わせて光りだす。そしてまもなく登場したのは、モデルのアンミカだ。着物には、流水の地模様に神々しい三才鳥の群れが飛び交う。続いて現れるルックには、水鳥や渦巻の模様、和菓子の飴などが描かれた。
また、2面性のあるものを表現したと上太郎が語ったように、伝統的な渋い要素ばかりではなく、ストライプやスター、時には猫やドットなど、ポップなモチーフも多く見られた。カラーも、グレーや黒といった落ち着きのある中に、蛍光のグリーンやピンクを織り交ぜ、新たな着物の美しさを提案した。
ラストルックには、黒地に白と赤のコントラストが楽しめる古典的な和服を身に纏ったアンミカが再び現れ、会場を魅了。しかし振り返ると、見たこともない程の大きなリボンが。伝統を重んじながら常に新しいものを生み出し、10年後、50年後のスタンダードをつくりたいという上太郎の思いは、まちがいなく観客の胸にも届いたことだろう。フィナーレではモデルが花道を作って親子を祝福し、拍手喝采のなかショーが幕を閉じた。