ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)の2025年春夏メンズコレクションが発表された。
今季のルイ・ヴィトンが目を向けたのが、地球上における人類の共生であったという。豊かな多様性を孕む人類を、そのニュアンスばかりでなく俯瞰的な姿を通して浮かび上がらせるという、ミクロとマクロの往還がデザインの原理となった。
テーラリングやワークをベースにしたコレクションを特徴付けるのが、遠目には穏やかな佇まいでありながら、近付けば多彩なニュアンスを含むという両極性だろう。実際、シングルブレストやショールカラーをはじめとするテーラードスーツ、フライトジャケットやワークジャケットなど、全体は洗練されたストレートシルエットで縦のラインを引き立てつつも、そこにはニュアンスに富んだファブリックやトーン・オン・トーンの装飾が溶け込んでいることがわかる。
そこには、人類の多様性を示すばかりでなく、どこまでも表情に富んだ皮膚への関心があったようだ。皮膚は、一見するとなめらかな曲面には思えるものの、よくよく目を向ければ微妙な色調の変化があり、凹凸があるというように、ミクロスコピックな構造に富んでいる。装飾模様を施したチェック柄、艶やかで質感豊かなレザーの数々など、ミクロとマクロを往還する視線は、シルエット、装飾、色彩の効果、そして素材にまで及んでいる。
スケールの異なる視点の交錯は、カモフラージュ柄にも通底させることができる。メンズ クリエイティブ・ディレクターのファレル・ウィリアムスは、そのデビューコレクションとなる2024年春夏に、ルイ·ヴィトンを象徴するモチーフのひとつ、ダミエ・パターンをカモフラージュへと再解釈した「ダモフラージュ」を採用した。何らかのモチーフをグリッド状に粗視化するその視点は、今季、スネークスキンのエキゾチックな模様へとm適用されている。
カラーは、淡いベージュからダークブラウン、グレーまで、皮膚の多様さを彷彿とさせるニュートラルカラーの豊かなグラデーションを軸に構成されている。また、ベーシックカラーのブラックも、ベルベットやレザー、シースルーのファブリックなど、素材を種々に変えることでニュアンスをもたらす。さらに、チェック柄やカラフルなダミエ・パターンなどにより、色彩の鮮やかさを添えている。