ディオール(DIOR)は、ウィンター 2022-2023 メンズ コレクションを発表した。
メンズ アーティスティック ディレクターのキム・ジョーンズが今季試みたのは、ブランドの創始者であるクリスチャン・ディオールとの対話。メゾンがスタートした初期の純粋さや当時の衝動に目を向け、“ニュールック”と称された建築的な美しさに着目した。クリスチャン・ディオールのデザインの根底を成す“JOIE DE VIVRE”=“生きる喜び”のスピリットは保ちつつ、フェミニンな装いとして打ち出されたシルエットを再解釈し、マスキュリンな造形に落とし込んでいる。
象徴的なのは、「バー」ジャケットだ。女性の身体のラインに沿うような、なめらかなフォルムを特徴とするディオールの「バー」ジャケットを、メンズに向けて新たに構築。ウエストをシェイプさせたディテールは踏襲しながらも、シャープなショルダーや直線的なシルエットを採用することでソリッドなエッセンスを効かせ、マスキュリンな佇まいに仕上げている。
しつけ糸の白いステッチをあえて残すことで粗野なエッセンスをプラスしたり、襟を立てて襟の裏側の刺繍を見せたりと、遊び心を効かせたディテールにも注目だ。
クチュールライクな装飾も目を引いた。アクティブなジップアップブルゾンやシャツに重ねたメッシュカットソーにはきらびやかな刺繍が全面に施されている。また、ホワイトのニットや艶やかな光沢感のブルゾンには可憐に咲くスズランの花々を刺繍で装飾。立体的な花びらの装飾を一面に施したニットは、野原を覆うように生き生きと咲く花々を思わせる。
加えて、カナージュモチーフのキルティングを採用したパテントレザーのコートやボアブルゾン、レオパード柄のコート、ブルーのローズを抽象的に描いたジャケットやトップスなど、ディオールのアイコニックなモチーフが随所に散りばめられている。バラの花束をレザーのケースに入れて手に持ったルックも登場した。
実用的なテクニカル素材やスポーティーなアイテムなどのコンテンポラリーな要素を、メゾン初期と地続きのエレガントな文脈の中でフォーマルに仕上げているのも印象的だ。アクティブな素材を用いたコートは、その質感を生かして軽快な佇まいに。程よくゆとりを持たせたリブパンツは、マットな生地を採用し、センタープレスを施すことで凛とした表情を演出している。
また、花の刺繍を施したビルケンシュトック(BIRKENSTOCK)とのコラボレーションサンダルや、艶やかなレザーやクロコダイル、ジャカードなど様々な素材で仕立てられた新作バッグ「ディオール コロール」トートも、実用性とエレガンスのバランスを探求して生み出されたアイテムだ。