カミヤ(KAMIYA)の2024-25年秋冬メンズコレクションが2024年3月11日(月)、渋谷の百軒店商店街にて発表された。
2015年よりメゾン ミハラヤスヒロ(Maison MIHARA YASUHIRO)の新ラインとして誕生した「マイン(MYne)」は、2023年秋冬シーズンから、デザイナー・神谷康司の名を冠した「カミヤ(KAMIYA)」へブランド名を変更。モード感のあるストリートウェアに神谷自身のルーツを落とし込む、新たなブランドとして歩み始めている。
カミヤとして2度目のランウェイショーとなる今回は、渋谷の百軒店商店街が舞台。大都会・渋谷の一般的なイメージとは対照的に、ノスタルジーな面影を残す商店街だ。しかし百軒店商店街が位置する道玄坂2丁目は、渋谷の再開発計画「街並み再生」エリアに含まれており、歴史ある景観が今後も守られていく保証はない。
カミヤが今季に掲げるテーマは「Time is Blind」。“恋は盲目”を意味する「Love is Blind」になぞらえて神谷がつくり出した造語で、流行り廃りのめまぐるしい現代の時間軸を、ファッションを通して見つめ直す意図を孕んでいる。
ショー全体を通して際立っていたのが、ワントーンのカラーでまとめたスタイル。序盤から、ブラック、カーキ、ブラウンと、シンプルな色合いで移り変わるカラーパレットを軸とし、ワークウェア・ミリタリーウェアを中心にあらゆるアイテムに取り入れられていたのが特徴的だ。特にスウェット素材のパーカーやパンツでは、ベースとなるカーキのカラーに色褪せたような風合いをプラスして、経年変化したかのような雰囲気に仕上げていた。
ディテールは、ダメージ加工を施したデニム素材がアイキャッチ。ジーンズとデニムジャケットのほとんどに、ヴィンテージな雰囲気を感じさせる加工をあしらっていた。神谷のルーツである“古着”の要素を新たな衣服に呼び起こす“ダメージ加工”は、古き良き風合いに愛着を持つ姿勢とも取れる。デニム素材に見られたダメージの数々は、慌ただしく過ぎゆく時間軸に流されない、ひとつの手段といえるのではないだろうか。
そして、新たなカミヤの一面を引き出すファブリックとして注目したいのが、上品なベルベット素材のピース。ジャケットのセットアップや、リラクシングなロングコートに採用された。あたたかみのある素材に施された繊細なラメは、歩みを進めるたびにきらびやかな表情を見せる。イエローのダウンベストや、ショート丈のパーカーなどに合わせられ、カジュアルかつストリートな雰囲気に、センシュアルな印象を融合させていた。