ジョルジオ アルマーニ(Giorgio Armani)の2024年秋冬ウィメンズコレクションが発表された。
真冬に咲き誇る花々を着想源とした、今季のジョルジオ アルマーニ。冬に咲く花とは、概して逆説的といえるかもしれない。冷え冷えと張り詰めた空気、しんしんと降り積もる雪──冬の静けさのなかで開く花は、なかなか目にすることができない。しかしだからこそ冬の花は、たとえ1輪ですら──生命感に溢れる春を仄めかすようにして──希望を仮託しうる優美なモチーフとなるのである。
冬に咲く花というテーマを直接的に反映するのが、花々のモチーフを取り入れたドレスやジャケット、コートなどだろう。ベースとなるのは、夜空を思わせるブラックやネイビー、霧に濡れたようなグレーなど、シックな色調でまとめたウェア。これら冬の空気を思わせる装いへと、花々の姿を多様な手法であらわしてゆく。
たとえば、スタンドカラーのロングコートなどには、大小さまざまに咲き誇る花々を図案化し、光沢感のあるファブリックで表現。洗練されたラインを描くノーカラージャケットには、色彩の自由なパターンに落とし込んだような花の姿を。あるいはイヴニングドレスをはじめとする華やかな装いには、きらめくような刺繍を贅沢に取り入れている。
これら、花々の姿を平面的に装飾したウェアが、縦のラインを意識した凛としたシルエットを引き立てるものであるとするならば、素材の特徴を活かして、いわば立体的に花々を造形化する例も見られる。シアー素材のブラウスは、ラメで縁取った花のモチーフを数多と揺らめかせる。また、ノーカラーのロングジャケットには、花弁を彷彿とさせる曲線的なプリーツを施すほか、ショートジャケットは波打つようなパイピングで、さながら花びらのパッチワークのごとく仕上げた。
素材について敷衍するならば、そこには──花に仮託した希望を仄めかすようにして──光への意識が流れている。なめらかにドレープを織りなしては表情を変えてやまないシルク、ベアトップドレスやイージー仕様のカーゴパンツなどに用いたベルベットなどに光はたゆたい、あるいは幾重にもチュールを重ねたスカート、刺繍を施したシアー素材のガウンなどには、光が透けるように行き交う──こうした光との戯れは、抑制されたダークトーンゆえにいっそう引き立てられている。
今ひとたび、花に戻ろう。花に着想を得るとは、その姿の華やぎを装いにまとわせるばかりではない。むしろ装飾性を抑制していったところに、花の優美さが純粋なかたちで立ち現れるのではなかろうか──そうであるならば、花の姿はわずか胸元のモチーフに留めつつ、ファブリックをアシンメトリックに重ね、裾にかけて流麗に広がるベアトップドレスは、冬に咲く花を研ぎ澄ませて具現化したものであるように思える。