映画『美と殺戮のすべて』が、2024年3月29日(金)より公開される。
ナン・ゴールディンは、1970年代から80年代のドラッグカルチャー、ゲイサブカルチャー、ポストパンク/ニューウェーブシーンなど、当時過激とも言われた題材をピックアップして撮影し、『性的依存のバラード』などでその才能を高く評価された写真家。2023年には、イギリスの現代美術雑誌『ArtReview』が発表するアート界で最も影響力のある人物ランキング「Power 100」で1位に輝くなど、今日に至るまで世界中に影響を与え続けている。
映画『美と殺戮のすべて』は、そんなナン・ゴールディンの人生とキャリア、そして大富豪サックラー家がオーナーを務める製薬会社パーデュー・ファーマ社の医療用麻薬オピオイド蔓延の責任を問う活動を追ったドキュメンタリー。
ローラ・ポイトラスが監督を務め、第79回ヴェネツィア国際映画祭では、最高賞にあたる金獅子賞を受賞。また、第95回アカデミー賞長編ドキュメンタリー賞へノミネートを果たした作品だ。
ゴールディンは、手術を受けた際にオピオイド系の鎮痛剤オキシコンチンを投与されたのをきっかけに中毒となり、生死の境をさまよった。その後復帰したゴールディンは、オキシコンチンを販売しているのがパーデュー・ファーマ社であることや、その背景に会社を所有するサックラー家がいることを知る。
巨大な資本を相手に声を上げ、戦うことを決意した彼女は、2018年3月10日、多くの仲間たちとと共にニューヨークのメトロポリタン美術館を訪れる。彼女たちは、製薬会社を営むサックラー家が多額の寄付をしたことでその名を冠された展示スペース「サックラー・ウィング」を目指して歩みを進め、到着すると「サックラー家は人殺しの一族だ!」と口々に声を上げながら、「オキシコンチン」という鎮痛剤のラベルが貼られた薬品の容器を一斉に放り投げたのであった。
この抗議活動の中で彼女たちが放り投げた「オキシコンチン」とは、「オピオイド鎮痛薬」の一種であり、全米で50万人以上が死亡する原因になったとされる“合法的な麻薬”だ。その「オキシコンチン」を大量に売りつけていたサックラー家に対して、一家とかかわりの深い美術館や大学を通して抗議し、アーティストとして活動してきた強みを活かしながら声を上げ続けた。
『美と殺戮のすべて』の作中では、彼女がなぜ戦うことを決意したのかに加えて、大切な人たちとの出会いと別れ、アーティストである前に一人の人間として彼女が歩んできた道のりを明らかにする。
【作品詳細】
映画『美と殺戮のすべて』
公開日:2024年3月29日(金)
監督・製作:ローラ・ポイトラス
出演・写真&スライドショー・製作:ナン・ゴールディン
字幕翻訳:北村広子
配給:クロックワークス
原題:ALL THE BEAUTY AND THE BLOODSHED