マルニ(MARNI)の2024年春夏コレクションが発表された。
パリで発表された今季のコレクションに寄せて、マルニのクリエイティブ・ディレクター、フランチェスコ・リッソはこう綴っている──「自由な散策にふさわしい街。遠い昔に初恋を経験し、自分を見失ってはふたたび探し方を見出した街。(…)ファッションというこのうえなく儚い幻想を実現し、迎え入れてくれる場所です。」
ある種、自由の場ともいうべきパリ。そうした雰囲気を映しだすかのようにして、コレクションには心地よい抜け感と華やかな色柄が取り入れられている。たとえば、クラシカルなテーラリングは、ブランドならではの構築的なフォルムを基調とはしつつ、踊るようにリズミカルなチェック柄やストライプ柄で彩られた。
シルエットは、アウターやドレスのダイナミックさと、キャミソールワンピースやトップスなどに見るコンパクトさの両極をなしている。ロングコートやベアトップドレスは、クラシカルなテイストを残しつつもオーバーサイズに仕上げ、さらにハリのある素材を採用することで、シルエットの大胆さを引き立てる一方、すっきりとまとめたトップスなどは、むしろ快活な印象を与える。
先に引用したリッソの言葉に、「儚い幻想」という言葉があった。パッチワークで構成されたドレスやジャケットは、その端的なあらわれではなかろうか。パリにまつわるささやかな記憶の数々を寄せ集めるかのようにして、色とりどりの、時に彩りの色褪せたモノクロームの花々が、衣服を織りなしてゆくのだ。
幻想が立ち現れる場としてのパリ。それが一瞬であるにもかかわらず、いや一瞬であるからこそ、その佇まいはいっそう華やぎに満ちる。ブラウンやベージュといったベーシックカラーを軸とはしつつ、ブルーやイエロー、グリーン、ピンクなどの鮮やかな色彩が、時にチェックやストライプへと交わりつつ、コレクションに散りばめられた。