ザ・リラクス(THE RERACS)の2023年秋冬メンズコレクションが発表された。
一般に男性服を代表するものと捉えられているテーラードスーツは、19世紀半ばのヨーロッパでその原型が固まったとされる。装飾性を削ぎ落とし、抑制された色調で仕立てられたジャケットは、いわば、確固たる造形を追求した新古典主義の残響と響きあうものだろう。装飾的なバロックやロココに反発し、古典の厳格さに範をとった新古典主義が理想的な身体を造形化したように、テーラリングにおいても華やかさは捨象され、身体のフォルムをなぞる純粋な造形が求められたのだといえる。
今季のザ・リラクスが焦点を合わせるのが、ほかでもなくテーラリングだ。ソリッドな構築性でもって確固たるシルエットを生みだしてゆくというそのベクトルは、理想的な身体のフォルムを描きだしてきたテーラリングがそのエッセンスとして有する、造形の純化を透明なかたちで反映するものだろう。
テーラリングが今季の軸となるというのは、まず、衣服のシルエットの追求がここにおいてもっともよく映しだされているということだ。ジャケットやコートは、全体として身体を包み込むようなオーバーサイズを基調に、ハリのある素材を中心に用いることで立体的なフォルムに。衣服の面を大胆に引き立てるソリッドな構築性を響かせながらも、ショルダーにはやや余裕を持たせたセットインを主に採用し、肩の位置を感じさせつつ柔らかな雰囲気を含ませた。
テーラリングは、アイテムの種類のうえでも豊富だ。ショート丈のジャケットやロング丈のコート、フロントはベーシックなシングルブレストやクラシカルなダブルブレスト、ラペルにおいてもノッチドラペルばかりでなく、ピークドラペルやショールカラー、そしてシルエットを決めるショルダーもセットインやドロップと、テーラリングに絞っても多岐にわたっている。
ザ・リラクスが服作りの根幹としている素材の追求も、テーラリングではアイテムに合わせた選択がなされている。とりわけ、その軸となるのがウールだ。定番素材・ハリのあるウールギャバジンによってジャケットの立体的なシルエットを叶えるのはもちろん、しなやかなウルグアイウールに柔らかなラムウールを組み合わせ、クラシカルなバーズアイに仕上げたり、異なるウールを織り合わせたフランネルにハリを持たせる加工を施したりと、素材のうえでもシルエットと表情に多様性がもたらされている。
着こなしにおいても、テーラリングが駆動力となる。すなわち、構築的なフォルムを生みだすジャケットやコートを軸に、上半身のシルエットを重視しつつ、首元に大きく開くVゾーンでレイヤードの変化をもたらしてゆくのだ。ダイナミックなテーラリングとは対照的に、インナーのタートルネックは細身のシルエットで仕上げ、コントラストの効いた佇まいに。さらにインナーでは、ハイネックばかりでなく、Vネック、フード、あるいはスカーフのディテールを加えるなど、着こなしの首元に自在な変化をもたらした。