ティート トウキョウ(tiit tokyo)の2023年秋冬コレクションが、新宿・淀橋協会で発表された。
今季のミューズとなったのはネットフリックスの配信ドラマ『クイーンズ・ギャンビット』の主人公である少女・ベス・ハーモン。人並外れたチェスの才能を開花させた彼女は、依存症や孤独、葛藤に苦しみながらもその才能を武器に強かに前に進む。そんな彼女の“不完全さ”は、均一的されたこの世界において狂気的ともいえる美しさとなって見る者を魅了するのだった。
舞台は2016年秋冬コレクションを行った新宿区の淀橋教会。二度目となるこの場所で、ティート トウキョウの岩田翔と滝澤裕史は、そんな彼女が持つ“生々しさ”をスキンコンシャスに描き出した。
カラーパレットはベージュのワントーン。これはワントーンであることにこだわるのではなく、あくまで「人の肌を美しく、着用者を引き立たせる」ことが重要だと岩田は語る。その言葉通り、一見シンプルに見えるその色味は赤みを帯びたベージュやこげ茶のようなベージュなど、表情豊かな使い分けがされていた。
透け感のあるメッシュシャツや、袖部分がシアー素材で切り返されたワンピースなど、体に寄り添うようなスキンコンシャスな素材使いはこうした色使いと相まって、一層肌を美しく際立たせている。
ウェアに潜む装飾的なディテールデザインは、こうしたクリーンなムードに遊び心をプラスする。例えばプリーツ素材のシアーワンピースには、フリルやギャザーを巡らせ、動きのある佇まいに。「モードの対極にある人間味を表現したい。あくまで極端ではなくなだらかに、見ている人の心を躍らせるような」と語られた今季のムードを象徴しているように感じられた。
女性らしい抜け感を演出するカッティングやパターンも印象的。アシンメトリーワンピースは、ショルダー部分に肌を見せることでセンシュアルに。テーラードジャケットは後ろ身頃を大胆に開けることで、エッジィなアクセントを加えた。