アン ドゥムルメステール(ANN DEMEULEMEESTER)の2023年秋冬コレクションを紹介。
今季のアン ドゥムルメステールは、ルドヴィック・ド・サン・セルナンがクリエイティブ・ディレクターに就任して初のコレクションとなった。ルドヴィックは、センシュアリティとジェンダーへの画期的なアプローチで注目を集めた若手デザイナー。ブランドのアイデンティティやデザイナーのアン・ドゥムルメステールに敬意を表しつつ、計36体のルックを通して、創業者へ贈る「ラブレター」を表現した。
「ラブレター」を象徴するのは、ブランドの重要なモチーフでもある羽根を模したレザーの細身バンドゥトップス。ファーストルックは黒の羽根で、ラストルックは白の羽根でショーの始まりと終わりを飾った。ラブレターを書くのにふさわしい羽根ペンを想起させるデザインで、誌的な雰囲気を醸している。
羽根モチーフのバンドゥトップスと呼応するように、フェザーを使用したルックが散見された。たとえば、翼のようにも見えるバルスリーブや、ウエストを少しだけ見せるボリューミーなコートなど。いずれも、なめらかにトレーンを引くローウエストのロングスカートと組み合わされて登場した。
ルドヴィックならではのジェンダーフルイドなアプローチは、アン ドゥムルメステールならではの繊細な表現と好相性だ。タイトなシルエットや大胆なカットアウト、また手で胸を隠し、より肌を見せるルックが印象的であった。中でも、バイアスカットのニットドレスは、まるで液体のように流れる甘美な線を描き出し、太ももを露わにした。
液体のようなラインは、シルクやシフォンといった素材によって一層強調された。ローウエストのマキシスカートはもちろんのこと、シルクのホルターネックワンピース、シフォンのワンピースなど、いずれも身体の線に沿い、丈は裾を引きずるほど長く、リキッドな印象を与えていた。