クレージュ(courrèges)の2023-24年秋冬コレクションが発表された。
光、霞、空気といった自然の力が漂う空間に、モデルたちが逆光を浴びながら登場。その無機質な光は、彼らが手にする携帯電話の画面から発せられている。
スクリーンに気を取られて丸まった姿勢と対応するように、コレクションの前半は曲線的なフォルムが列をなす。2023年春夏コレクションと同様に、デニムジャケットやフーディー、シアリングブルゾンなど、デイウェアの典型がボリューミーな形に再構築され、ボディラインを外界から覆い隠している。
そんな日常を映すようなルックに、儀式的でロマンティックなディテールが段々と加えられていく。ネックラインに埋め込まれた真鍮のジュエリーや、ドレープジャージのプリーツのボリュームを利用した放射線状の真鍮のペンダントが、内なる光を解き放つ内省的な旅へと我々を誘う。
さらに、へそにカットアウトを施したトップスや、透け感のあるナイロン素材のドレスなどが、着用者だけが持つ身体の特徴を浮き彫りに。ボディを徐々に露出させることで、自分自身を主張し、拡大する自由を表現した。
心臓の鼓動に重なるようにセンターに配した円形のミラーは、さながら暗闇の中で輝く“日食”。視線を携帯電話の画面から上へと向け、世界における自分の存在を見つめることの重要性を説くと同時に、自分のありのままの姿が自己実現の道しるべに成り得る、という希望的なメッセージが感じられた。