空は青く、誰もが笑顔で、子供たちの楽しげな声が聴こえてくる。そして、窓から見える壁の向こうでは大きな建物から黒い煙があがっている。時は1945年、アウシュビッツ収容所の所長ルドルフ・ヘスとその妻ヘートヴィヒら家族は、収容所の隣で幸せに暮らしていた。スクリーンに映し出されるのは、どこにでもある穏やかな日常。しかし、壁ひとつ隔てたアウシュビッツ収容所の存在が、音、建物からあがる煙、家族の交わす何気ない会話や視線、そして気配から着実に伝わってくる。壁を隔てたふたつの世界にどんな違いがあるのか?平和に暮らす家族と彼らにはどんな違いがあるのか?そして、あなたと彼らとの違いは?
映画『関心の領域』は、マーティン・エイミスの同名小説を原案に映画化した作品。監督・脚本は、ジョナサン・グレイザーが務め、映画では、第二次世界大戦中、アウシュヴィッツ強制収容所と壁一枚を隔てた屋敷に住む収容所の所長と、その家族の暮らしを描いている。